所司和晴 著 1990年9月
アマのトップクラスの棋力が向上しても、アマの中級者・初心者は大多数を占める事は変わりません。
超初心者を除けば、ひとつの戦型を深く掘り下げた定跡書・研究書よりもある程度幅広く網羅した定跡書を必要としています。
定跡は日々変化しています。その最先端の情報は貴重ですが、多くのアマにはそれのみでは理解できません。そもそも その元になる知識が不足しているのです。
それならば、アマの中級者・初心者向けに幅広い定跡を最先端も含めて基礎的な事から分かりやすく説明した本も必要と されます。
これらの本はシリーズ化してかつ、定期的に書き継ぐ必要があります。なかなか大変な事ですが、ありがたい事にこれを 行った棋士が歴代存在します。機会があれば取り上げたいと思いますが、個人的には芹沢博文・北村昌男・佐藤大五郎などの 名前が浮かびます
現在では、所司和晴の名前をはずす事はできません。人は彼を「定跡の伝道師」と呼びます。
取り上げた本の題名の10、2の数字が如何に継続的なシリーズかを知らせるのに有効でしょう。この本自体の出版年は 古いですが、著者はその後も現在も同じような出版を継続しています。
横歩取り定跡を取り上げたのは、この本の出版年と現在(2007年)の間に歴史上はじめての5段飛車定跡・横歩取り 中座飛車(8五飛)戦法があらわれたからです。
中座飛の流行は、横歩取りの他の定跡をしらない人も巻き込みましたが、果たしてそれでよいのか。
それ以外の横歩取り定跡はあまり大きな進歩はない事が、本書と現状との比較でわかります。
横歩取り定跡は、先手と後手の双方の合意(どちらも自信がある)状態で成立します。従って、知らなくても避ける事が 出来ます。
ただ実際に指すかどうかは別にして、1手の重要さを一番分かる戦型として勉強しておくのは棋力の向上に役立つとは 思います。
1:相横歩取り
2:3三角戦法
3:3三桂戦法
4:4五角戦法
5:2三歩型
6:5五歩型
2冊目という事で、1冊目を読んだ人向けの記述が多くありますが単独でも充分理解できます。
2の3三角戦法が、こののち大きく変貌した中座飛戦法です。その前段階として、後手の中原囲いが登場します。
本書が書かれた時期には、どちらもなく、8四飛+中住まいが定跡でそれで全てが書かれています。
逆に本書を読むと、内藤流3三角+中住まいの確立に続く、中原囲いと中座飛がいかに将棋の歴史のなかで 異質で定跡や大局観を塗りかえるものだったかがあらためてわかります。
現在では、この中座飛(8五飛)の定跡書のほうが多いです。
3:については、その後現れた脇流と、タイトル戦に現れた脇流2局で、結局この形は現在では少数派のままです。
その他の形は、意外なほど本書の時代から変化が少ないです。いわゆる有力な新手があらわれていない戦法といえます。 こんな事も時代を映した定跡書は分からせてくれます。
著者は海外への普及も熱心で、本著にもその一端が現れています。形勢判断と指し手の判断を記号で表し、その説明を 英語で説明しています。盤面図面と棋譜と記号のみでも、あるていど役だたせようとする試みです。しかし、海外普及には より明確な英語等の解説書が必要と思います。
また個人意見として、現在の伝統的棋譜記号は非可逆的で途中図と棋譜からでは元に戻りません。
チェス式の棋譜方式(移動元と移動先を表す)で可逆的なものにかえる必要があると思います。実際に封じ手では使用 されていますし、コンピュータ将棋では必然的に使用され、「将棋倶楽部24」では実対局にも使用されています。
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