湯川博士著 1990年7月
将棋(指将棋)のルールを元に、日本人のゲーム・芸術感覚等を加えて発達したのが詰将棋です。
勝敗を争う将棋(指将棋)とは異なり、詰将棋は解答募集の方式で出題される事が多いです。
また、問題と解答を合わせて乗せた本や、雑誌も多く出されています。
詰将棋自体も、将棋(指将棋)とは独自の発展をしました。
最初は、指将棋の最終盤の詰む局面を提示して「詰む手順を答えなさい」というものでした。
ここから次第に、1:指将棋とは異なる独自の妙手を含ませる、2:玉方は最善に逃げる、3:詰将棋には追加された ルールの元で作意が唯一存在してそこでは詰め上がりに手余り(詰め方は全ての持駒を使用する)を認めない。等のルール になって行きました。
そこでは、極端な難解性・詰ます事以外に持つ手順や使用駒や盤面の形等の、別のパズル性の発展がありました。
出題時に、目安としてX級問題等をかかげる事がありますが、指将棋の強さと直接の関係はありません。
一時は詰将棋は指将棋に邪魔になる等の意見もありましたが、現在では「読みの練習」「読みの速さの向上」目的で 短い手数の問題を個人の力にあわせて時間を決めて考えるのが効果的との意見もあります。
指将棋は原則は2人で対戦します。
詰将棋は、1人の出題者と多数の解答者でのパズルです。
それでは、その中間の世界はどうかというのが「大道詰将棋」です。
ルールは将棋と同じですが、対戦形式で出題者が玉方を持ちますので上記の詰将棋のルールはおおむね無視されます。
すなわち、詰め方が玉方の玉を詰ませたら勝ちです。最善とか単一手順とか手余り不可とかは無関係です。
しかし難解なものは誰も詰まそうとしません。そこに、「見た目は簡単に詰みそうですが、実は玉方に絶妙の受けがあり 容易に詰まない」という独自の問題と世界が出来ました。
大道棋は独自の魅力があります。しかし、どこの世界でもありがちですがこれを利用した詐欺行為が行われた事もあり 次第に衰退しました。現在では、わずかな伝承者による日本独自の伝統となっています。
玉を詰ますという事を除けば、指将棋に近いと言えますが、作品を作るのも・出題して玉方を持つのも・詰めるのも、 かなりの将棋(+アルファ)の実力が必要です。
色々な頭を使わず、種々の研究もいらない手軽な遊びが増えている現在では、廃れたとも言えます。
まえがき
1章 香歩問題
2章 銀問題
3章 双玉問題
4章 金問題
力だめし
コラム
大道棋士銘々伝
秘蔵双玉
大道棋の魅力を伝える事は難しい事です。
基本的な易しいものは、あまりにも広く知られています。そして、少し奥に入れば多くの人には既に難しい世界です。
したがって、問題的には易しくしかも解説は丁寧にとなります。これに合う読者は少ないでしょう。
従って、読み物としての面白さを出すために歴史や逸話やコラムとで、色々な工夫をしています。
そして次第に奥深くという展開ですが、詰め物としては急激にレベルが上がってしまいます。
読者が少ない大道棋を、限られたページ数で描く事に無理があるのでしょう。
著者の苦労は、あまり報われなかったのではとの危惧があります。
とにかく、百聞は一見にしかずの世界ですが、もう見る事はほとんど無理です。
現在では、残された多くの問題を解いたり鑑賞したり研究したりする、楽しみ方に限られます。
しかしそれも、限られた時代になりました。
コンピュータの詰将棋を解く能力は急激に発達しています。
玉方の意表の受けも見つけます。しかし、七変化といわれる内容はコンピュータは解いても、人間に理解できるように おしえてはくれません。
意表をつく心理戦、その時の状況で玉方が逃げ方を変えて迷わす勝負の世界は、継承したい伝統芸です。
少なくても、その歴史と手法と問題を残して行くことに意味は大きいと思います。
指将棋の勝負の魅力と、詰将棋を解くパズルを合体させて話芸と心理戦を加えた世界は、詰将棋でありながら指将棋の 終盤の魅力とも通じる部分があります。
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