シリコンバレーから将棋を観る 梅田望夫 2009年4月
「ウエブ進化論」はベストセラーになり、入試試験等に複数採用されました。
その多くが、羽生善治の「高速道路とその先の渋滞論」でした。
具体的で分かり易かったと推察します。
プロ将棋に詳しくない人は、トッププロの勝率が6割平均で、ただひとりトッププロ通しの対戦の中で羽生善治のみが7割越えで ある事実は知りません。(トッププロとの対戦が増えると自然に勝率は落ちて来ます)
1局単位で勝ち負けを重要視し、トッププロ集団と羽生善治という棋士の平均勝率の差が非常に大きい事が理解出来ていません。
生涯平均勝率と、1局の勝ち負けとの差は隕石に当たって死ぬかどうかを議論する程に無意味とは、詳しくない人は理解出来ない世界です。
将棋ファンと言う言葉と、プロの存在とがバラバラに使用されて来ました。
野球やサッカーではありえない事です。
将棋ファンにも、野球等と同様に色々と存在することをこの本の著者は明確に指摘しています。
この当たり前の事が何故か公言されなかった事自体が不思議です。
将棋ファンは強くなければならないと言う間違ったタブーから解き放ち、プロの将棋を観戦するファンが存在する事が明確に 示した本書は「将棋ファン」という言葉に大きな分岐点を作るでしょう。
ちなみに私個人は、昔はアマレベルでは強い時もあった、現在は全く指さない、プロ将棋を観戦するファンです。
はじめに
第1章 羽生善治と「変わりゆく現代将棋」
第2章 佐藤康光の孤高の脳−−棋聖戦観戦記
第3章 将棋を観る楽しみ
第4章 棋士の魅力−−深浦王位の社会性
第五章 パリで生まれた芸術−−竜王戦観戦記
第六章 機会の窓を活かした渡辺明
第七章 対談−−羽生善治 X 梅田望夫
あとがき−−−「もっとすごいもの」を
将棋の本の感想が、各種メディアに掲載される事は珍しいです。
本書については、既に多くの人が感想を書いています。
従って、かなり個人的な感想にしようと思います。
私の趣味は、大きく4つ程度ですが、将棋とコンピュータが含まれます。
梅田氏の名前自体は、コンピュータの世界の人との認識にあります。
ただ、数学・物理系の技術者の私には、その方面に将棋ファンが多いという認識はありました。
自ら将棋を指していたのが、16才から25才までで、そこで個人事情で止めて、それ以降はプロ将棋を見るファンであり続け ました。
梅田氏は、昔将棋を指していたが今は指さない・プロ棋戦を見るのが好きというファンは沢山存在するとしていますが、私個人も ぴったりこれにはまります。
本書の半分以上は、ネットでタイトル戦のライブ中継時にリアルタイムに書かれた梅田氏のウエブ観戦記です。
観るファンの私は全て読んでいますが、事前に調べて準備した内容とライブで進む内容を併行して書いた観戦記のレベルの高さは何回読んでも 既に、ネット時代のライブ観戦記のスタイルのひとつを示していると感じます。
その中で、アマ5級向け解説・アマ初段向け解説・アマ有段者向け解説を試みています。
勿論、プロの開設者に要求しています。
どのレベルの解説にするかはいつも課題です。
最低限であっても絶えず試みは行ってゆく必要はあるでしょう。
梅田氏は、本著でしばしば金子金五郎八段の解説(金子教室)に触れています。
私はその後期に将棋をはじめました。
そして個人的にはこのウエブサイトの内容からも推察できる様に、金子の弟子の山田道美九段のファンでその影響を強く受けています。
金子・山田以降にも、色々な棋士が執筆で活躍していますが、個人的には島・勝又・藤井の各棋士の著書が好きです。
本ウエブの内容から分かるように、将棋が強くなる定跡書については現在はあまり大きな興味はなくなりました。
それよりも将棋のプロの考え方や、プロ棋士の個性が表れている著書により興味があります。
定跡書は、「これにて有利」で終わらないと売れないという人もいます。
ただ私が上記で書いた棋士の著書では、「これで1局」「互角」などが普通に登場します。
結論は書かれた時点での判断で、プロ将棋は絶えず進化する。
その進化を観戦する事は、観る将棋ファンには非常に大きな楽しみです。
そしてその様な観るファンが潜在的に多数存在する事を示したのが本書です。
本書は、梅田氏の翻訳フリーの宣言で既に英語訳が完成し、そこから多数の言語への翻訳が進んでいるとの事です。
将棋の海外普及には、翻訳本が絶対的に少ないと言われています。本書がその突破になるかもしれません。
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プロ将棋を観戦するファンは多数存在する
情報時代のプロ将棋は容易に強くなるシステムが出来ているが
その後は人間の創造性で決まる。ライブ観戦記の試みの記録。
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