勝又清和 著 1995年12月
将棋には数々の作戦(戦法)が存在します。
そして、戦法には時代の変化とともに流行と衰退があります。新戦法として登場して流行した戦法が、いつしか指されなくなる 。何故かその謎には理由がある筈であるとして、それを追いかけたのが本書です。
従来には定跡書や手筋書は多く書かれて来ました。それらは、プロやアマのトップクラスには、文字通り常識的な内容が多いでした。 その内容をより詳しく書く事も重要でかつ難しいです。
しかし、ここに新しい方法で書いた本が出ました。プロ間での戦法の流行や衰退には全て理由があり、それを追求してまとめる事で 定跡の考え方やポイントを掴み、普通のアマ中級者以上でも理解しまた読み物としても面白くなる事を示しました。
自ら自分で指す事で、本を書く島朗、研究内容を本に書いた山田道美。
そして、ここに第3の方法で本を書いた勝又清和が出てきました。
そのコンセプトは、わから無ければ他のプロに聞く、その内容をまとめる。でした。単純というなかれ、プロが他のプロに分からないから 聞くという単純な事が通常されないのが普通だったのです。
矢倉編(スズメ刺し・2九飛戦法・森下システム・米長流急戦矢倉・中原流急戦矢倉・6二飛戦法・5手目7七銀)
振り飛車編(左美濃・ツノ銀中飛車・風車・後手5二飛戦法・升田式石田流・阪田流向かい飛車・玉頭位取り・角頭歩突き)
角換わり編(早繰り銀・棒銀・筋違い角)
相掛かり編(横歩取り・塚田スペシャル・中原流相掛かり・たこ金戦法)
戦法の流行にはいくつか要素があります。1:実際に実戦に現れやすい戦法であること、2:実戦で使用される程優秀でかつ 必要性が有ること、3:新戦法あるいは改良手が発見されたこと、4:トッププロや注目棋戦で指され多くの注目を浴びて優秀と の共通認識がされる事 等があります。
将棋は対戦ゲームですので、相手が回避しても相手の有利にならなければ1:に該当しません。
これは2:にもあたりますが、新手>改良手>再対策の繰り返しになります。改良される程必要性が高い事も条件です。
流行には、是非が不明な事が必要です。定跡が完成して、どちらかが有利との結論がでれば不利なほうが避けるので衰退します。 本書はその一応の結論がどのように出され、結果として戦法が消えたかを書いています。
新戦法は新手・新改良手で始まると書きました。従って、結論が出た戦法でも新しい改良手や、戦略が発見されると 修正された形で復活します。
上記の中で4:については、異論があると思います。実際、アマが始めた戦法もあれば、低い段位の棋士が指し始めた戦法 も多くあります。しかし、多くのファンに注目されるにはメディアで紹介される必要があります。また優れた成績をあげるトップ プロが用いる事で戦略として内容が充実し戦法が急激に進歩するのが真実です。
たとえば、あるあまり指されなくなった戦法について、「特別に悪い戦法とは思わないがトッププロの誰も指さないので 全体として良い印象を持たれていない」と言った事があります。
結果として勝つから、新戦法が注目されるのであり、その為には勝率の高いトッププロがその戦法を採用するかどうかは 大きな影響があるのです。
著者の勝又は1995年3月に四段になりプロ棋士になり、1995年12月に本書を刊行しました。
プロになって直ぐに名著を出す事は異例である事も重要です。著者は2007年現在六段で、「将棋博士」のニックネーム を持ち、総括的な戦法分析やコンピュータ将棋等に詳しく活躍しています。新しい手法の本を出した功績をそのまま引き続けて 活躍しています。
Copyright (C) 2007- kei All Rights Reserved.
※当サイトのテキスト・画像等すべての転載転用、商用販売を固く禁じます。
将棋関連書籍・名著を探し・読む
将棋に関する、あらゆる書籍が対象です
内容と対象者を考慮して、名著を探します
実は「名著」とはなにかも、重要です
将棋に関する、あらゆる書籍が対象です
内容と対象者を考慮して、名著を探します
実は「名著」とはなにかも、重要です