石川陽生・中田功・安西勝一著 2003年8月
この書籍には3つの特徴があります。
1:初出が1994年であること。
2:当時はまだ新鋭だった複数棋士共著形式の2冊目である事。
3:小説では普通の文庫化が「将棋文庫」として作られて、本著は16冊目にあたる事。
4:多くは基本的に改訂は行わず、「解説」を加えて初出発表当時と、文庫出版時の状況を説明。
5:必然的に安価版となっています。
かなり斬新な試みです。
この本に関しては10年後の文庫化です。
時代の風化を気にすると、この種の本は出せないが文庫で復刊をして、その後の進歩を加えた内容で「新」「続」 を出版する組み合わせが増えて相互効果があると思います。
将棋戦法には流行があります。
トップクラスの将棋が影響が大きいですが、プロ棋士全体の流行・傾向も大きな影響があります。
研究量で優位で、スペシャリストが多い世代を起用した定跡研究書・特に複数棋士で特に得意とする形を担当する 試みは興味があります。
第1章 定跡研究編
第2章 実戦編
第3章 次の1手編
第4章 三間飛車好局集
1960年台生まれの3人は初出当時は30才前の新鋭でした。
そして現在は、中堅からベテランへ入りかけているといえます。
初出の1993年の頃は、トップクラスに振飛車派が少なく、プロ棋戦とアマ棋界が異なる戦法が指されていました。
当時は既に、居飛車の穴熊・左美濃が多く指されていて、振飛車はその対策に追われていました。
前回取り上げた革新的な振飛車「四間飛車藤井システム」の登場前で、大きな変動の前でした。
「藤井システム」も難しいですが、目標の曖昧な状態で戦うのはまさしく職人芸の時代でした。
種類としては、四間飛車と三間飛車が主流で、本書は三間飛車を集めています。
新鋭棋士の著書は現在まで継続しており、情報化時代で全棋士の棋譜が容易にみれる現在では比重は増しています。
石川は三間と四間の両刀として、中田は「コーやん流三間飛車」の使い手として三間と中飛車で活躍しています。
プロ的には、早い変化で取り残されている感はありますが、アマ的には今でも充分に参考になります。
一番の特徴である「文庫」化は非常に新しく感じました。再刊ではあっても読みたい本はあります。それが、多くの 復刊から選べかつ価格が約半額ですから需要は充分あります。
海外普及の英語翻訳の増加や、有力棋士のエッセイ、その他多数の要望や課題がありますが、低年齢層や広い範囲の 普及を考えると安価版の出版の意味は大きいでしょう。
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