羽生善治・先崎学 著 2000年11月
村山聖は現在、将棋界をリードしているいわゆる羽生世代のひとりであった。
1998年8月8日に、再度のA級という最高リーグに所属したまま死去しました。
小説「聖の青春」の主人公のモデルです。その意味では、阪田三吉と同様に有名かもしれません。
しかし、棋士は死して残すものは闘いの記録である棋譜です。
本著は、代表局10局を2人の著者が解説して、村山九段(死去の翌日、八段から九段に昇段)の闘いの全成績と 年表を加えて貴重な歴史に残る集成としたものです。
若くして、病におかされていた村山は第3者にはあまりその事は知られていませんでした。
結果的に、トップクラスでの死去後に棋譜を調べると多くの棋士が、奥底に潜んでいる心境を指摘する向きも あります。しかし、本著では感情的な部分はおさえて、純粋に将棋内容の解説を行っていると感じます。
故人の棋譜と記録がまとめられるのは、そう多くはありません。
多くの実績と棋譜を残した棋士に限られます。
村山は、羽生世代という大きな山の最後に位置しており死去時にようやくこれから活躍する位置に到達した感が あります。
人間の死は悲しい事ですが、棋士としての村山はこれから多くの名局と実績を残す事を期待されながら、病で成し遂げる 事が出来ませんでした。
残された棋譜は、天才棋士の成長の歴史とその後の期待を見せるものばかりですが、まだ成熟に達していません。それは 約束されていたと考えると非常に残念です。
1:まえがき
2:名局譜10番
3:村山将棋の検討を終えて
4:村山聖資料編
プロ棋士の棋譜は、棋力とともに個性を表現するものです。
そしてそれが、確立されるにはかなりの時間を要します。
しばしば、若い時は勝敗よりも上記の確立に力をそそぐべきとの考えが示される事もあります。
現在、村山の棋譜を見直したときに、どんよくまでに勝敗にも拘っている事が指摘されています。理由として 自分の病を知っていたので普通の棋士のように、棋力がつけば結果はあとからついてくるというような、のんびりした 考えはなく短い人生でも目標を達成したいという意識があったとされています。
村山の資料・特に順位戦の成績表を見ると羽生世代の強さがあらためて分かります。
村山を含めて全勝がかなりあります。1敗で昇級できない者もいたようです。そんな中でトップクラスのA級に 登ったことで村山自身の才能も分かります。
棋譜解説自体は専門的で、急速な時代の進歩もあり簡単に分かる内容ではありませんが、解説者2人の対談や長所・欠点 の指摘を読むといくらかはイメージできると思います。
将棋の世界にも温故知新はあります。残った棋譜のなかでも、現在でも指されている形はあります。個々の意味は深く なっても、秘められた戦略は再度登場する可能性はあります。
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