山田道美 著 1969年07月
理論派・研究派の雄である山田道美故九段は、研究・発表という新しい世界の開拓者です。
本著の序でも述べている様にそれ以前は「将棋の本はできるだけやさしく書く方がいいという定説が出来てから久しい。」(はじめに)、状態でした。
初心者向けの入門書の必要性は、21世紀の現在でも変わりはありません。
しかし、その結果アマチュアトップやプロの新人等が読む内容の本はほとんどなかった状態でした。
プロの世界では研究は公表せずに、実戦でしようして勝つ事が目的でした。
また、いわゆる裏定跡と呼ばれる難しい変化手順が多くの場合存在しますが、内容が難しくなるので省いて書かれていました。
また実戦を重視する立場からも、理論や研究を軽く見る風潮もありました。
理論や研究のみで将棋を勝つ事は出来ませんが実戦のみで勝つ事も同時に容易ではありません。
当時は関西流の実戦(実際は理論も優れているが知りつくす事は困難)派の大山・升田の兄弟弟子がトップを維持していました。
実戦的才能が優れる棋士のみがトップを取る時に、研究の要素を加えて将棋の歴史に新しい流れを作った功績は非常に大きい といえます。
21世紀の現代では、コンピュータのデータベースも広がり誰でも容易に研究が出来るようになりました。
同時に複数のプロが研究会を開くことも普通になりました。
その流れの元は、山田を含む研究グループにあると言ってもいいとも思っています。
今での「山田定跡」は残っており山田の生き方と共に影響は与え続けています。
私個人は完全に山田の影響をまともに受けた世代です。
指し盛りに急逝した事は非常に残念ですが、その残したものは非常に大きいと言えます。
山田の残した著書は2冊と、没後に出版された棋譜集のみですが、本名とペンネームで雑誌等に発表した数多くの研究等は その後の将棋の上級者向けの本の内容を変えたと言って良いと思います。
残り2冊もいずれ取り上げたいと思います。
山田・宮坂・富沢等のグループの研究は、表面的には対振飛車の居飛車急戦定跡です。
当時の振飛車は実戦派が多く定跡への対応能力も修正能力も既に高かったといえます。
結果として、研究・急戦対実戦・修正の対決の要素がありました。
それは実際的に非常に奥が深く、簡単に結論がでる種類のものではありません。
それ以前ではわざと片方が優勢になる手順のみを書いた定跡書がふつうでした。
山田の本には、「互角」「難解」「今後の課題」等の言葉が多く出てきます。
まさしく本音を書いていると感じます。
定跡は絶えず修正して進歩します。
それは必ずしも結論が出ての事とは限りません。
プロでも流行はありますし、有利な展開も勝負という面からは勝ちにくい形は存在します。
人間は間違うものです、その重ね合わせの結果勝ち易い戦法が好まれる事も事実です。
山田定跡は急戦を基本としています。
将棋の流れとして、対振飛車も持久戦が研究が進みました。
それが主流になった時に振飛車側に新しい命が生まれ大きく戦略が変わりました。
現代でも急戦を得意とする棋士はいますし、序盤戦略として急戦定跡は避けて通る事はできません。
詰みと必至 :4項目
将棋の見方考え方:5項目
現代戦法の研究:8項目 現代将棋の傾向・現代将棋の盲点・ツノ銀中飛車の実戦研究 矢倉の実戦研究・四間飛車の急所・三間飛車の急所・角換り腰掛銀の急所・穴熊の急所
私が実戦を行っていたのは8年間でその前半は、山田定跡の時代です(少なくても私個人は)。
終盤型で序盤・中盤に問題があった私には、本で研究するには山田八段(当時)の研究はかかせないものでした。
急戦は研究していると知らないでは雲泥の差があります。
少なくてもアマチュア三段までは知らないと対応できません。
随分勝たせていただきました。
流石に四段以上になると急戦のみでは簡単には勝てませんが、作戦を幅広くする上で欠かせません。
何もない所から、作り上げた定跡は今になってかえってその大きさを感じます。
当時は振飛車全盛でしたが、中原・米長・有吉・内藤・加藤等が中心になると次第に相居飛車時代に変わります。
相矢倉・相懸かり・角換わりの時代に入ります。
これらは振飛車と異なり序盤から、変化が多く戦略が表面に現れます。
山田八段や加藤八段(当時)の本を読んでいた私はしばらくはかなり有利でした。
当然ながら時間と共にアドバンテージは少なくなりました。
山田八段のほんには、定跡以外の論考が多く含まれます。
その中には将来を見据えたものも多くあります。
現代の状況は山田八段のイメージを越えた所に来ている事がわかります。
しかし、なお生きている理論と基礎としての急戦定跡はこの本がなんらかの形で残る事を示しています。
実際、後に復刊されています。
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