さわやかに勝ちたい人へ
1982年発行>現役九段時代に書いた新書。
新書特にビジネスマンをターゲットにしたものは、題名と目次で内容が分かる事が重要です。
その為に、異常に目次が細かく、詳しい人には内容も予想出来ます。
本書もそれに倣っており、あえて目次を詳しく引用しました。これで内容の説明は不要に近いです。
まえがき
一章 さわやか流の勝負観−「確率」「勢い」「運」の三要素をどう考えるか
「不可解な力」は偶然か運か
没後地主の四男坊
私の人生観をつくった父の生きざま
米長家は、日本国に貸しがある
人間は、常に悪手の山の中を歩いている
勝負の三要素は、確率・勢い・運
「弱いパットは入らない」
名人戦より必死にやるべき対局とは何か
羽織袴で臨んだ十段戦の消化試合
二章 集中力をどう持続するか−私が自らを鍛えた勉強法
雑事の忙殺されないコツ
「急がば自分で考えろ」
忘れ物が多くなると将棋指しは合格
「自分にはわからない」とわかることの重要さ
大事なことこそ簡単に決めるべし
ウマイ話の落とし穴は第一感で見抜け
アマチュアの芸とプロの芸の違い
三章 非情に徹する勇気が必要−勝利の女神は、どんな男に微笑むか
トーナメント・プロ失格寸前の棋士を全力で負かす
一生の運を賭けた大野源一九段との勝負
自分に有利な空気を創り出す法
勝てば官軍、負けたら辛抱
運も実力、不運も実力
四章 ただ勝つだけでいいのか−一流になれるか否かの分かれ道
創造力を発揮しようとする新手一生型
男が成長するのは、全部の力を出し切る時
仮説がなければ、チャンスを活かせない
カンは、努力・知識・体験のエキス
なぜ、師匠の反対を押し切って進学したか
バランスだけが命綱
先見性の有無が勝率を決める
先見性を隠し続けた木村義雄名人の作戦
五章 強者は泥沼で戦う−勝負に勝つ二つの心得、「雑の精神」「省の精神」
なぜ、最終的には悪手である手を、あえて指すか
将棋は必ず泥試合になる
許容範囲を持つことが創造力、先見性の土台
最善手をあえて指さなかった森安八段との一戦
米長家の”五箇条の御誓文”
丈和名人と赤星因徹の対決
難局では、最も結論の出しにくい手を指す
なぜ、「雑の精神」と「省の精神」が必要なのか
序盤の一手より中盤・終盤の一手が重要
本当の勝負はパターンから外れた時に始まる
強い人ほど泥試合を好む
弱い者ほど早く結論を出したがる
六章 逆転のテクニック−一気に浮上するためには、どう辛抱するか
世の中の事象は、すべて波に支配される
不利な時の「勢い」とは何か
歩の動きは王様の都合で決まる
悪手を連続するから、墓穴を掘る
勝負手を生むのは実力と性格
絶妙手の見落としは、気にしなくていい
どうしたらカンの狂いが直るか
女房と母親は絶対的味方
女と見栄は勝負事の大敵
なぜ、大蔵省の講演を一万円で引き受けたか
勝たせたいというムードを作れ
常に「今日は何のための日か」を考える
七章 男らしさとは何か−さわやかさの原点は、他人に”借金”をしないこと
「清濁併せ呑む」とは
さわやかさの原点は、貸し方に回る生き方
給料の安さは会社への貸しだと思え
「寝たふりのできる女」こそ最高
仕事が第一でない男は男じゃない
今後必要なのは、好きなことを仕事にする人間
遊びは仕事の影である
新宿二幸前交差点の青春
子どもは父親の背中を見て育つ
子どもには、才能や適性より、集中力を
「お前は一流になる」と励ますのが一番
仕事を愛せることほど幸せなことはない
将棋棋士自身のエッセイは、継続的に出版されていますが、その世界の特殊性か量的には限られています。
将棋界でしらない人はいないと言われる米長哲学=「相手の大事な対局ほど自身も一番大事な対局」は本書の中心
になっています。
勝負の世界では、勝っても負けても自分にはほとんど無関係で、相手は非常に大きい対局があります。この場合は、
勢いから大事な方が勝ちそうです。しかし、それは違うというのが米長哲学です。これが浸透すると、消化対局がなくなります。
勝負師は個人が、1流派ですから何が正しいとかの議論は意味はありません。
勝負という明確な結果の中に勝負師の哲学・思想を見る事が可能性があります。
これを一般人の個人に当てはめるのか、グループ・企業・政府にあてはめるのかは、あくまでも何かの部分的・制約的になるでしょう。
ただ、脱個性化時代でも個性で自らの存在を主張する世界の人の考え方は、プラス面でもマイナス面でも参考になる所は多いでしょう。
時代は変わり、内弟子は無くなりました。たぶんこの筆者の抱えた内弟子が最後になる可能性もあります。
師匠が弟子と将棋を指さない時代も終わっています。今は、師匠が弟子に対局を通して指導している例も報じられています。
本書はそのような、些細な内容の変化以外の所で読むべき内容でしょう。
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