今福栄・原田泰夫 著 1977年8月
アマの夢は長く「プロに平手で勝ちたいであった」。一部の並みのアマチュアが「プロとは二枚落まで」と本に書いて悪評を 勝った事もあります。プロの棋力も、アマのトップの棋力も理解できない棋力ではやむを得ないが「井の中の蛙大海を知らず」 の例であろう(少なくてもアマのトップの実力は理解していない)。
現在の急激なアマの棋力向上は、羽生善治三冠の「高速道路論」をはじめ色々といわれていますが、普及を全面に出す以上 アマの棋力向上はプラス思考で考えるべきでしょう。
さて1977年の状況は、恒例のアマ名人対プロ名人の角落記念対局でプロが勝ち越していました。ここから生まれたのが 「プロアマは飛落まで論」です。
しかしアマのトップは満足しません。当時は交流が少なかったので、対局の雰囲気不慣れなどアマにハンデが多く、実力が 反映されていないと言う主張です。
そこで中立の出版社が企画したのが、この将棋プロアマ角落十番勝負です。登場選手の選考はプロはプロが選び、アマは プロは関知しない。対局はアマの慣れた環境を優先するです。
将棋は勝敗の動きが大きく、継続した企画でないと本当の実力は判断できません。1回のみのこの企画で判断はできません。 しかし、その後のアマプロ交流のきっかけのひとつになったとプラスに考えたいです。
本企画は雑誌連載され、後に単行書になりました。今福栄は観戦記者で、原田泰夫八段は立ち会い+解説担当です。
結果は、5勝5敗になりました。平手戦を目指すアマには不満な結果となりました。
内容を見ると、1回の企画の限界で選手選考が難しかった様に感じます。
当時でも既に、平手全盛時代です。アマ・プロ共に駒落を指し慣れた対局者と不慣れで実力を出せなかった対局者の存在 が感じます。
本書の巻末に付録として、角落ち講座が掲載されていますが、角落ちという手合いはすでに定跡はあるもののそれは建前 で、平手と同様の創造と応用の世界である事が実戦で分かります。アマプロ平手戦時代の到来が現在ですがその過程として 是非読んでおきたい本です。
序 米長邦雄
プロアマ角落十番勝負 今福栄
1:名人 中原誠(○)対 アマ五段 柿沼昭治 東名人
2:八段 桐山清澄 対 アマ六段 関則可 アマ名人(○)
3:八段 大内延介 対 アマ五段 野口俊二 都名人(○)
4:八段 森鶏二 対 アマ六段 高野明富 アマ名人(○)
5:九段 加藤一二三(○) 対 アマ六段 沖元二
6:八段 勝浦修 対 アマ五段 高橋治雄 赤旗名人(○)
7:八段 米長邦雄(○) 対 アマ五段 柳浦正明 西日本名人
8:九段 内藤国雄 対 アマ六段 加賀敬治 アマ名人(○)
9:九段 二上達也(○) 対 アマ五段 内田昭吉 都名人
10:十五世名人 大山康晴(○) 対 アマ六段 西沢章 アマ名人
原田角落指導対局
角落必勝講座
跋 原田泰夫・今福栄
知らない事は恐ろしい、実に色々の戦前予想が出されました。ただその多くは勝敗は傾くとの予想でした。
結果は5勝5敗です。アマ名人はともかく都名人や赤旗名人は知らない人も多い時代です。将棋の強さを知らない 予想はむしろ信仰か期待に近いです。
プロ陣営を見て、詳しい人は中原・大山・加藤にはアマが勝つのは難しいであろう。アマ棋界に詳しいプロは 5勝5敗を予想したと言われるが結局は7番勝負はプロ2勝5敗の読みであろう。
現在は平手全盛時代ですが、複数の番勝負でプロの四・五段がトッププロに勝ち越すには角1枚強くなる必要が あるという意見もあります。
同様にプロトップのひとりが、トーナメント方式のアマ名人戦で優勝する自信はない(リーグ戦ならば別)との 発言もあります。
最近、将棋世界誌でトッププロ6人に聞く企画があります。その中に駒落の手合いでどこまでならば勝てるかが あります。どうもアマの段は幅広くはっきりした区切りは難しい事・駒落は上手のさじ加減で勝敗的には大きく変わる があります。
現在は、アマはプロとそこそこの勝負を行っています。対局数が増えたので信頼性が高くなって来ました。しかし その上のタイトル者との差はどうかはまだまだ不明です。番勝負になれば出てくる理解しにくい差が存在するように 思います。
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