とっておきの相穴熊 広瀬章人・遠藤正樹著 2007年10月
現代将棋で、穴熊囲いを避ける事はできません。しかし、昔からある囲いがプロ棋士が採用し体系化されてからはかなり 経ちますが理論的構築はようやくまとまって来た感があります。
いわゆる穴熊将棋3原則「堅い、攻めてる、切れない」に持ち込む攻防に焦点が移っています。
原則が出来たら次は、如何に序盤を組み立てるかに感心が行きました。穴熊に囲う事を妨害する戦略と、囲う事をマイナスにする 戦略は今も進歩中です。
そして穴熊囲い特有の中盤と終盤術の考え方へ。戦線と玉との距離の問題と影響、その最大の特徴の「Z(ゼット)」状態の 攻防の考え方へです。
「Z(ゼット)」状態とは、相手の持駒によらず絶対詰まない状態です。
これらの先にあるのが、相穴熊です。双方が穴熊に囲うと同じ特徴になります。その時の戦い方は特殊になります。
現時点では、経験値の差が優劣を決めるといわれる状態です。
その経験値の高い2名の対談方式で書かれた本著は、異色の内容となりました。。
第1章 相穴熊の基本的な戦い
・四間飛車
・四間飛車2
・三間飛車
第2章 相穴熊における終盤戦の考え方
・穴熊の特性
・相穴熊仮想図A
・相穴熊仮想図B
・相穴熊仮想図C
第3章 実戦における考え方
・テーマ1−26
思い出の相穴熊戦
参考棋譜
穴熊囲いは誤解を受けてきたといえるでしょう。
最初はプロ向きでないという、次は守備に偏りすぎているという、その次は堅さに頼りすぎると言う誤解です。
現実は長所も欠点も存在する、ひとつの戦法です。
ただ、「堅い、攻めてる、切れない」という考えやすさを過信しすぎる欠点はありますが多くの棋士に使用されています。
相穴熊は、双方が同じ戦略で組み合いますから、いわゆる手詰まりになる可能性があります。攻めた方が不利になり、どちらも 手が出せずに千日手指し直しになる可能性です。
またお互いに類似の戦略の時は、逆にわずかな有利さを得るための微妙な戦いになります。これは、片方が穴熊に囲った時の 戦略とは大きく変わります。
それでは、その時のわずかな有利さを得る方法はというと漠然としていて説明しにくいものでした。それゆえ、経験値が高い方が 有利といわれる様になりました。
本書は、その経験値が高いプロとアマの2名がテーマ図にたいして、その経験値に基づく考え方を語った対談形式の本です。
経験値が必要な戦型を、経験値の高い人から学ぶには有効な方法で書かれていると思います。
同じ形はなくても、如何に応用できるかがポイントですが、経験値とはその応用力です。
そして、若手プロ棋士とアマ強豪との組み合わせも、理解しやすい内容になります。
結果的に、広い考え方を広い棋力の人に伝える事が出来ていると思います。
そして、経験値とは終盤の読みの力・正確さがあってはじめて生かせる事が理解出来ます。
それに欠ける場合は、それなりの戦略が必要だという事も分かります。ただし複数の選択肢はいつも有るわけではない事も事実です。
共著という方法のひとつの形が生きた本です。
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穴熊将棋3原則「堅い、攻めてる、切れない」
「Z」は相手の持駒によらず絶対詰まない状態