その一手がすべてを語る・名棋士たちとの百対局回想録 田中寅彦 2000年9月
筆者が「週刊文春」に連載した2年間の評論・エッセイをまとめたものです。
登場棋士も棋譜の局面も年代順ではなく、筆者の書きたい順・あるいは思い出した順でしょう。
棋士と将棋に関する評論・エッセイを、実際に著者自身の対局の1局面からの1手を元に書いたものです。
逆に言えば、著者自身が公式戦で対戦した棋士のみが対象になる評論です。
著者が本書を書いた時は。棋士生活28年の九段の時です。それからも続々と若手棋士が登場し、本人は理事も経験し 10年後の現在はまた新しい事が加わっているとも思います。
対局を通して棋士を見るのは、棋士のみ可能な事です。
登場棋士(登場順)
升田幸三・佐藤康光・郷田昌隆・屋敷伸之・大内延介
丸山忠久・村山聖・小林健二・福崎文吾・原田泰夫
森けい二・二上達也・中川大輔・内藤国雄・有野芳人
島朗・真田圭一・関根茂・野月浩貴・松下力
谷川浩司・田丸昇・飯田弘之・三浦弘行・加藤一二三
河口俊彦・先崎学・沼春雄・真部一男・石田和雄
豊川孝弘・板谷進・小野修一・達正光・佐瀬勇次
行方尚史・土佐浩司・中原誠・岡崎洋・丸田祐三
深浦康市・久保利明・神吉宏充・佐藤義則・五十嵐豊一
田村康介・高橋道雄・吉田利勝・阿部隆・田中魁秀
安恵照剛・畠山成幸・川上猛・花村元司・桐山清澄
瀬戸博晴・森下卓・武者野勝巳・北浜健介・淡路仁茂
植山悦行・北村文男・中田宏樹・米長邦雄・窪田義行
塚田泰明・櫛田陽一・中村修・芹沢博文・中田功
泉正樹・剱持松二・井上慶太・青野照市・伊藤果
伊藤能・宮田利男・佐藤大五郎・南芳一・有吉道夫
大島映二・広津久雄・森内俊之・小堀清一・北島忠雄
羽生善治・桜井昇・木村義徳・坂口允彦・高田尚平
長谷部久雄・神谷広志・灘蓮照・富岡英作・脇謙二
飯野健二・森安秀光・前田祐司・勝浦修・大山康晴
対局時期はバラバラですが、10年前の棋界が多く対象となっています。
古い対局・棋士は、懐かしい思い出を、10年前の対局は当時の棋界の状況や当時の各棋士の評価や若い時代の逸話が見つかります。
データベースが一般的になっても、この本で選ばれている局面を見つける事は思い付かないでしょう。
著者が、独特の感覚で似た形が少ない棋士でありその記憶から選び出した局面は殆ど同一局面がありません。
この一手としても、予想問題ではありませんが、筆者には予想外の手でありかつ対局者の個性があらわれていると言えます。
そこから、筆者は決まったページ数で対局時とその相手棋士の思い出や近況等を書いています。
時系列ではなく断片てきですので、ちょっと厳しい人もいると思いますが、ちょっとしたその時代以前からのプロ将棋ファンで あるならば、懐かしい話やそれは知らなかったという逸話が満載です。
登場人物には、10年前に既に死去していた棋士も、その後亡くなった棋士もいます。
ひとりの棋士にとっては、先輩と後輩との存在は避ける事は出来ません。「老兵は退く」事ではなく、新たに出発するという 筆者の感想は、現在の棋士としての対局や理事経験や普及活動を見るとうなずけるものがあります。
局面は個性的な一手を選んでいるので、次の一手とはやや異なりますが、個人的な印象では同レベルの局面ではないかと思います。
むしろ生の実戦であるため、難しいです。この本を次の一手として読む人はいないと思いますが、じっくり局面を読むのも良いかと 思います。
中堅以上のベテラン棋士のエッセイを読むと、懐かしい出来事が思い出されてオールドファンには楽しくなります。
定跡書は日々更新されますが、歴史は積み重ねられて行きます。
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