山田道美手合 1970年11月
若くして現役A級で死去した山田道美八段(贈九段)の手合集を中心に、著作や資料を集めた本です。
有志(山田交友研究グループ)により、死後まもなくに編まれました。著作権は遺児になっています。
最近でも、村山聖九段がA級在籍で死去し小説や対局集があまれています。しかし、本書は商業出版ではなく、有志による 編集・出版である事に特徴があります。
最初に多数の寄稿があります。
次に全ての対戦者から最低1局の「手合集」があり本書の中心になっています。
その後は、故人が雑誌等に寄稿した随想等があります。(ペンネーム発表も有ると思います)
そして自戦記が3局掲載されています。そして年表。
以上は目次順の記載であり、実際のページ訳は、混在させて掲載する編集です。
現役A級棋士の死去の衝撃は大きいものです。山田九段後も、大山十五世名人(癌宣告後)と村山九段(休場療養中)が ありますが、ある程度予想される状況でした。
山田九段の場合は、突然に訪れた血小板減少性紫斑病であり全く予想外の突然の死だった為にその衝撃は大きかったです。
絶局は、1970/6/6の本書でも新聞掲載観戦記が掲載されている棋聖戦挑戦者決定戦の対大山名人戦でした(敗戦)。 死去は同年6/18です。死去の直前に原稿を書いていますし、本当の急死でした。
もしも、棋聖戦挑戦者決定戦に勝っておればタイトル戦の挑戦者の急死になる所でした。現在まで前例がなくどのような扱い になるのか知りません。
序 金子金五郎
山田さんのこと 丸田祐三
天、無情 高橋健二
山田、無念の王将戦 倉島竹二郎
ある転機 宮坂幸雄
山田将棋の形成を考える 金子金五郎
思い出す二十年前(奨励会) 二上達也
山田九段との印象譜 加藤一二三
山田道美九段を偲ぶ 中原誠
山田さんと戦う(王位戦より) 西村一義
山田九段の絶局(産経新聞切り抜き) 原田泰夫
九段山田道美手合集
随想 山田道美
自戦記 山田道美
中飛車の実戦研究 山田道美
アマの目、プロの考え方 山田道美
九段山田道美・年表
当時は大山名人を中心にした振飛車がタイトル戦の中心でした。
山田は研究グループを作り、振飛車破りの急戦の研究に没頭していました。
四間飛車に対する「山田定跡」は現在も生きています。
対振飛車対策はその後に大きな変化をしていますので、単純にはあまり指されてはいませんが、基礎として知っている べき内容のひとつです。
山田は、その対振飛車破りを全面に出しており大山名人をはじめとする対戦等の注目度は大きいものでした。
実戦派と研究との戦いは、アマでも存在し注目でした。私個人は、研究派で山田の研究はバイブルでもありました。
山田の研究会には、若手の棋士や奨励会員も参加しておりその研究の意志は受け継がれたとされています。
具体的には中原十六世名人(現在)が代表とされており、大山振飛車との戦いは印象に残ります。
山田の奨励会時代の棋譜や印象等の記事もあります。
それを読むと、力が弱く盛んに理論を語るとして将来性に疑問を書いています。
まだ研究より実戦という時代だったのでしょう。どちらが欠けても厳しいのが現実でしょう。
山田は、研究を雑誌に発表していました。これには反対の棋士も多かったとも言われます。
相手に教えるのは勿体ない・アマのトップレベルでないと理解出来ない内容だ等がその理由です。
安易に妥協する初心向け定跡書や、勝敗のみに拘る姿勢ではなく将棋の真理の追究者という姿が見えます。
理論派といわれた金子金五郎の弟子に山田という理論派の棋士が誕生するのは偶然でしょうが、研究というひとつの流れを作ったと言えます。
Copyright (C) 2009- kei All Rights Reserved.
※当サイトのテキスト・画像等すべての転載転用、商用販売を固く禁じます。
将棋関連書籍・名著を探し・読む
将棋に関する、あらゆる書籍が対象です
内容と対象者を考慮して、名著を探します
実は「名著」とはなにかも、重要です