一般に詰将棋マニア間では、中編詰将棋作家として知られている作者です。
中編を中心に、短編から長編まで網羅した詰将棋図式集です。
江戸時代は、将棋は名人家が囲碁は本因坊家が、幕府の下にありました。
原則は、名人家は世襲制で(分家や養子や争い将棋の事は省略します)した。
そして、お城将棋という将軍の前での対局(実際は事前に対局したものを、お城で再現する)を行いました。
現在、日本将棋連盟が開催している「将棋の日」は、お城将棋があった日とされています。
それと、初代名人から、献上詰将棋集が出されていました。
最初は、まだ勉強用のようでルールも確定していませんでしたが、次第に現在のルールに整って来ました。
そして、三代伊藤宗看「無双」や贈名人伊藤看寿「図功」等の、神局とも長く言われた作品集が作られました。
なお、この時代の本は正式名は類似しており、現在の通称は後世に区別する為に、つけられたものです。
指将棋と詰将棋は、作図に関しては異なる才能によるもので、誰でも双方が高いレベルではありません。
江戸時代の図式集は、はたして個人・本人のみが作ったかどうかを疑問視する見方もあります。
むしろ、正常な見方とも言えますし、現実に八世名人・大橋宗桂「舞玉」を最後に、献上図式集は出されていません。
それは、明治・大正を経て、昭和の実力名人制になっても同様です。
実力制では、名人通算5期獲得で引退後に襲名する制度になりました。
しかし、引退後襲名の実施例が少なく、襲名時期は原則といえるでしょう。
実力制では、十四世・木村義雄、十五世・大山康晴、十六世・中原誠まで襲名しています。
そして、有資格者が、十七世・谷川浩司、十八世・森内俊之、十九世・羽生善治の3名です。
結局、九世から十六世まで献上図式集はなかった事になります。
指将棋棋士にも中編・長編詰将棋を作図する人はいますが、名人の献上図式は次は予定は無さそうです。
可能性は、本作者の第2集とも言えます。
指将棋上達に、詰将棋を解く事を薦めるひとは多いです。
雑誌や市販書に、短編詰将棋集は多数あります。
そもそも、短編とか長編とかは詰手数の分類であり、目的の分類ではありません。
ただ、現実にはメデイアからの需要があるのは、短編とくに易しい短編でしょう。
最近では、3手詰からの超短手数作にも需要が生まれています。
それらも重要ですが、少数のマニアや上級者の読み練習用として難解作品や、中編・長編作も作られています。
これらは一般向けでないので、需要があるから作るのではなく、趣味の世界です。
同時に、指将棋棋士の棋力とは異なる才能です。
指将棋棋士が、趣味として中編・長編作を作る必然性はなく、才能と好きという双方が必要です。
また、それを継続して100局を集めて、詰将棋作品集にまとまるのは大変な作業です。
それに、永世名人の条件が重なる事は、希というか偶然が重なったといえます。
指将棋棋士の読みの能力は、誰もがしる事です。
その能力を、詰将棋の作図のノウハウとして会得する事はまた、希でしょう。
作者は、本書では過去に発表した作品を全面的に改良しています。
その理由を、詰将棋作図の技法・ノウハウが判ってきた・会得したとしています。
具体的には、初期の形から詰手順を作る手法に、逆算という手数を巻き戻す手法が加わったとしています。
一度完成したものを、改良する事を推敲といいます。
本書は、作者が全面的に推敲をおこなった事を表す、書名がついています。
これは、実はなかなか出来ない努力であり、本書の特徴です。
複数の棋士が、将棋上達法に簡単な詰将棋を毎日解く事をあげています。
その結果、簡単な詰将棋の需要が増えています。
簡単とはどの程度かというと、人それぞれ、棋力により異なります。
一般的には手数の短い問題でしょう。
同時にテレビで、羽生名人(当時)が鞄から、マニア向けの詰将棋専門誌を取り出して、「頭のストレッチ用に解いている」と述べました。
ようするに、将棋の局面を読むために、朝とか移動中にストレッチ的に、思考能力を高める事に詰将棋を解いているという事です。
勿論、同様の難しい問題がストレッチになるレベルの人は少数でしょう。
指将棋を離れたパズル的な趣味の世界では、詰将棋のプロはおらず、棋士もアマチュアとしての参加です。
そこでは、多様な詰将棋の世界があります。
そこに高い棋力・読み能力を持ち、それを土台に独自の世界の詰将棋を作る作者の存在は貴重です。
その作者の作品集、それも全面改稿・推敲した作品集は、余分な肩書きや能書きなしでも待たれたものです。
日進月歩の将棋の世界、詰将棋の世界双方から見て、歴史的に永久に残るであろう本になるでしょう。
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