(上) 森鶏二 著 1998年11月
(中) 内藤国雄 著 1998年12月
(下) 二上達也 著 1979年01月
日本将棋大系 1979年04月 の別巻1・2・3の文庫版
ゲームとしての「指将棋」に関する本は江戸時代から存在していますが、家元の門外不出もありそれほど多くありません。
上巻の前半には、現在のパズルとしての「詰将棋」の原型としての作品集が掲載されています。
パズルには「ルール」が必要です。ゲームとしての「指将棋」にプラスアルファのルールがどのようにして、加わって現在の ルールになったのかがおおよそ推測できます。。
大系という事で、ほとんどの作品集から複数局を選んでいます。
山本氏によれば、「現代は懸賞詰将棋という新しいジャンルが開拓され、余詰や駒余りが生じない完全作が要求される ようになり、作図の姿勢が大きく変わってきた。(中略)詰手順というより正解手順が絶対の要求であり、(中略) 本巻では現代の目をもって古作物を再検討しながら、あくまでも古作物の作意を生かして鑑賞するという立場を貫いた。」 としている。
無双・図攻を頂点とする江戸時代の詰将棋の繁栄は現代にも大きな影響があり、担当の棋士も思い出を書いています。
個々の作品集も復刊されていますが、まとまって複数局を抜き出して全体を大系的に見る試みは、個々の著者(解説者) の熱意もあり成功していると思います。
このような企画は、なかなか機会がないので古典の大系化という性格ともあいまって、長く残る棋書といえます。
収録作品集(作品集名は、現在の呼び名です。現代は類似が多く区別が困難です。
(上)将棋力草・将棋経鈔・将棋衆妙・将棋駒競・将棋手鑑・将棋勇略・将棋精妙・将棋大矢数
(中)将棋網目・将棋養真図式・将棋手段草・将棋勇士鑑・将棋無双・将棋秘曲集・将棋図功
(下)象棋攻格・将棋妙案・橘仙貼壁・将棋大綱・将棋舞玉・将棋玉図・将棋極妙・象戯童翫集
注:当て字あります。また、各巻にその他作品が収録されています。
解説は上記のプロ棋士であるが、「人と作品」と題する解説が山本亮介氏でつけられています。
引用した山本氏の文章にもあるように、詰将棋のルールの確立前から始まりますので現在のルールで読む事が出来ない 部分も特に(上)では多くあります。
また資料性を重視しているので、不詰・不完全にとらわれず作品を選んでいるのも特徴です。
古典は写本で伝わったものが多く、図面のみで解答が伝わらなかった物が多くありました。その結果、誤図や誤作意が 多くあり疑問局とされたものもありました。
しかし、国会図書館の内閣文庫で原本がみつかりかなりの部分が解明されています。その中でも、将軍徳川家治の象棋攻格 の発見は重要な功績です。
また今は知る人も少なくなった大小詰将棋についても、解説されています。初形または詰め上がりの駒の配置から、旧暦の の大の月と小の月の並びを示すもので、旧暦ではうるう月も多いので、期間を限れば作品がどの年を表しているか分かります。
また将棋妙案の作者の久留島喜内が和算の久留島義太と同人物で、上記大小詰将棋から年代が古いとされた。しかし、作品 内容からは謎が残されています。本書も謎が多いとしています。
古典詰将棋は現代の懸賞出題を見慣れていると、なじみにくい面もあります。が、詰ます目的の初期・独自の娯楽性(芸術性 と呼ぶ人もいますが)を追求した中期、しだいに現代的な作品が目立ち始めた後期のどれも歴史的のみならず技術的・目的的 に意味をもつものです。
古典の代表は、無双・図功でほとんど一致しています。勿論それに意義はありませんが、私個人の好みは、秘曲集・妙案でも あります。
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