2010年11月刊行
著者自ら開いた「リアルタイム観戦記」と棋士との対話篇とでまとめた本。
副題が「現代将棋と進化の問題」であり、あえて本題名を著者は残酷な題名と言います。
少数精鋭を維持する日本将棋連盟は、順位戦を開催してトーナメント棋士に順位をつけています。
これで一定の成績を残せなければ、フリークラスという暫定クラスに規定の期間・定年まで在籍して引退になります。
これほど、判りやすい制度も珍しいが、そこには複数の天才と呼ぶべき棋士がいます。
将棋界を知らない人は、なかなか理解出来ないでしょうが、この制度では勝率4割から6割の間にほとんどの棋士が入ります。
強くなれば、強い相手と対戦する仕組みがそうなります。その中で、トップであるながら7割以上の勝率の棋士が羽生善治です。
他の棋士には残酷かも知れないが、羽生の強さは特別とも言えます。
はじめに−−残酷な問いを胸に
第1章 大局観と棋風
・リアルタイム観戦記「割れる大局観」第80期棋聖戦第1局
・対話篇「棋譜を見れば木村さんが指したものとすぐわかる」(羽生善治)
第2章 コンピュータ将棋の遙か上をゆく
・リアルタイム観戦記「訪れるか将棋界『X・day』」第80期棋聖戦第5局
・対話篇「互角で終盤に行ったら、人間は厳しいです」(勝又清和)
第3章 若者に立ちはだかる第一人者
・観戦エッセイ「『心の在りよう』の差」第57期王座戦第2局
・対話篇「あれ、むかつきますよ、勝ってんのに」(山崎隆之)
第4章 研究競争のリアリティ
・観戦エッセイ「研究の功罪」第68期名人戦第2局
・対話篇「僕たちには、頼りないところがあるのかもしれないな」(行方尚史)
第5章 現代将棋における後手の本質
・リアルタイム観戦記「2手目8四歩問題」第81期棋聖戦第1局
・対話篇「優れた調理人は一人厨房でこつこつ研究する」(深浦康市)
あとがき−−誰にも最初はある
称号は対局当時、及び2011/1現在
対局者:第80期棋聖戦:羽生善治棋聖対挑戦者:木村一基八段。
対局者:第57期王座戦:羽生善治王座対挑戦者:山崎隆之七段。
対局者:第68期名人戦:羽生善治名人対挑戦者:三浦弘行八段。
対局者:第81期棋聖戦:羽生善治棋聖対挑戦者:深浦康市王位。
*「登場人物」。
梅田望夫:シリコンバレー在住。ITコンサルタント。プロ将棋を観る将棋ファンを提唱する。
羽生善治:九段・名人・棋聖・王座。資格:永世名人(19世)・永世棋聖・永世王位・名誉王座・永世王将・永世棋王。
>オールラウンド棋風>大局観に優れ、羽生マジックという逆転構想で知られる>新手も多いが修正派の代表ともされる。
木村一基:八段>「千駄ヶ谷の受け師」ともいわれる独特の棋風の居飛車派。
勝又清和:六段>「将棋博士」とも言われる理論派であり、将棋の整理と本質講座で知られる。居飛車正統派。コンピュータ将棋界も詳しい。
山崎隆之:七段>新構想派の若手代表で、山崎流という多数の戦型がある。力戦を好み、新構想を指す。
三浦弘行:八段>棋聖1期>「ムサシ」の異名がある研究派の棋士で、研究量と深さで知られる。「ミレニアム囲い」で升田幸三賞受賞。
行方尚史:八段>居飛車正統派とも無頼派ともいわれる。研究・理論・実戦のバランス派の棋士。
深浦康市:九段>王位2期>居飛車派でバランス派の棋士で、終盤の粘りに定評がある。
*「棋戦」
タイトル戦>名人戦(順位戦)・竜王戦(旧十段戦)・王位戦・王座戦・棋王戦・棋聖戦・王将戦
トーナメント戦>朝日杯オープン・JT杯日本シリーズ・銀河戦・NHK杯・新人王戦。
*「段位」
昇段規定で獲得する。順位や成績が下がっても、変わらない。最高位は九段。
*「順位戦」
名人:1名>A級:10名(定員制・2名降級)>B級1組:13名(定員制・2名昇級・2名降級)>B級2組:10回戦リーグで2名昇級+5名に1人が降級点で降級点2回で降級>C級1組:10回戦リーグで2名昇級+5名に1人が降級点で降級点2回で降級>C級2組:10回戦リーグで3名昇級+5名に1人が降級点で降級点3回で降級
同一組でも順位があり、原則は同一成績は順位の頭はね
これ以外にフリークラスがあり、C級1組昇級規定がある。
*「現代将棋」
決まった定義はない。1:実力名人制以降、2:大山・升田時代以降、3:中原・米長時代以降、4:谷川時代以降、5:羽生世代以降、6:将棋棋譜のデジタル化以降、7:将棋のインターネット中継以降、8:直近3年程度、など異説あり。
梅田氏は、6以降のどれかを念頭に置いているようです。
将棋の世界に情報戦争的な概念が生まれた以降、急激に将棋が進歩しています。
その結果、次々に新しい考え方が生まれて急速に進歩しています。
コンピュータ将棋は、ハードとソフトとの急激な進歩で人間と異なる手法で進歩しています。コンピュータと人間の勝負に興味がある人が多い。
個人的には、疲れと年齢と体力の制限がないコンピュータが、勝つのは当然で興味はないです。
ただし、理系技術者としてソフト的アルゴリズムとニューロコンピュータへ繋がるかどうかには興味があります。
将棋は指すゲームという考え方から、プロ将棋を観る楽しみを提唱する著者の考え方は影響が大きいと思います。
観る楽しみには、理解出来る解説が必要であり、本書もその試みのひとつととらえています。
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著者自ら開いた「リアルタイム観戦記」と棋士との対話篇。
プロ棋戦を観る将棋ファンの存在と観戦解説の重要さを説く。
上記のための試みのひとつであり、一つの解説手法。