二階堂黎人
二階堂黎人は本格ミステリー作家であり、現代及び少し前の時代を背景にした、二階堂蘭子シリーズや水乃サトルシリーズなどの多数の作品がある。
ロジックとトリックを駆使した本格パズラー分野を中心に作品を発表し、同時に本格ミステリーの普及をも目指す。
二階堂黎人は本格ミステリと同時に、sfファンでもあり、手塚治虫のファンで漫画にも関心を持ち、カーの作品や名探偵への思いも強い。
聖域の殺戮
二階堂黎人はスタートレックの世界へのオマージュとして、宇宙捜査機「ギガンテス」を主人公にしたシリーズを創った。
SFの世界を背景にして、本格ミステリーを創り上げる事は前例があり、代表としてアイザック・アシモフの作品群を上げる事が出来る。
自然界とそこに存在する自然法則を使用して、科学的なミステリーが書かれている、物理的や心理的な内容であっても原則は存在する科学知識と機械等が前提となる。
それで限界を感じた作者はそこに架空の要素を加える事も増えた、そこでは幻想や妄想類も含まれる事から読者が推理出来るかどうかは曖昧になる事もある。
厳密な空想科学小説と呼ぶ分野があり、そこでは作者の空想は現代の科学知識の延長上に置かれる。
そこでは、読者も同じスタートラインから始まるので、作者の提示した謎や展開を予想して解き明かすと言う分野になる。
もう一つに小説上で架空の設定を可能な限り、定義して示す事で作者が読者との共通認識にする手法がある。
数学の世界は、少ない設定=証明しない前提から初めて、矛盾しない世界を構築する。
そこでは、自然という比較する物を前提としないので、自ら矛盾が無ければ成立すると考える。
小説上の架空の設定を前提として設けて、そこに矛盾がなけえば、それを使用・成立する世界で物語を閉じさせる。
物語が本格ミステリーならば、作者が設定に矛盾せずに作った謎を、その世界の設定で解決する手法を取る。
読者は設定を、共通化する事で作者の描く世界で、謎を解く事も可能になる。
作者は設定資料集を本の末尾に提示して、用語や固有名詞も提示し、読者に提示している。
感想等
架空の設定を使う小説は多く溢れている、それ自体の良否はもはや議論できない位に広い。
だが厳密な世界設定となると少ない、そして本格ミステリー小説でありロジック小説でありパズラーとなるとまだまだ少数だ。
本作は未知の宇宙空間を調査する宇宙船と乗組員を主人公にする事で、未来の設定でもそこにはそれ以上の未知の謎が存在しそれを解き明かす事になる。
作者は宇宙空間の調査をスタートレックの世界への思いから、SF本格ミステリの手法はアシモフの「鋼鉄都市:への思いから作り上げたと言う。
双方が組み合わさる事で、未知の宇宙空間での未知の謎を、本格ミステリの手法で解くというスタイルが産まれた。
未知なる空間の未知の物質と、生物との遭遇自体を、謎解き競争の楽しみとともに楽しむ事が出来る。
架空設定とは何でも可能になるが、それにも関わらず謎解きを、読者と競うには、独特の難しさがある。
難しさを克服した作品は多くはないが、それ故に貴重な作品群として読者に認識される事になるのだ。