東野圭吾

東野圭吾は、現在日本のエンターテイメントを代表する作家だ。
基本はミステリだが、初期の謎解き本格から、広義の本格に作風を拡げた。
同時に、本格に捕らわれない広義のミステリにも分野を広げ、その作品事にジャンル分け論争が起こりかねない。
舞台の架空設定は、SF的・幻想的に広がり比重が高まって来た。
ただ、テーマ性が高い作風と理系出身だけに、幻想というよりもSF的な味が強い
そして、設定をミステリに使うと言うよりも、一体となった構成を取る。
従って、SF的設定も相当に深い作品もある。
パラレルワールドや幻想設定は、いまや常識的に使用される。
だが、サイエンスを意識しているものは多くはない。
東野圭吾は、どれも書き分ける
それ故にサイエンスへの意識も強い。
まだ真の宇宙には羽ばたいていないが、生物学や脳科学のミクロコスモスには深く入っている。

プラチナデータ

「プラチナデータ」は作者の東野圭吾の造語と思われ、物語の中心になる重要なデータを示す。
DNA捜査は一時完璧なものと誤解された。
これに検挙率100%でかつ、冤罪率0%になる妄想が生まれた事がある。
今は科学的に、確率の問題と理解され、誤用・誤理解や問題点が表面化している。
本小説の舞台は、検挙率100%でかつ、冤罪率0%が達成されたシステムが開発された近未来だ。
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あらすじ
DNA捜査で検挙率はあがったが、ある事件でDNAデータの検索システムは類似する遺伝子が登録されていないケースとなった。
別の事件での兇器が同一で、DNA解析をすると現れたDNAモンタージュが検査官とそっくりだった。
事件に二重人格者が絡み、自分の人格が殺害したのか不明で、確認は難しかった。
検査官は、殺害犯人と疑われて追われたが、同時に疑問の捜査を行う。
捜査官も、関係者が急に捜査打ち切りを図り、疑問を感じて調べ始める。

感想等

SFをサイエンスと狭く捕らえる事は減少し、ハードと言う言葉を加える。
ただ、幻想・怪奇まで全て含めるほどには、作品には不足していない。
読者側に、双方を受け入れる準備があるので、その流れもあるがそろそろ整理される頃だ。
個人的には、「サイエンス」か「スペースオペラ」的な宇宙の舞台が、「SF」に似合うと思っている。
小説の設定を科学的に計算して可能性を調べる程の愛好者も、それに答える作者も減少した。
そこまで厳密でなくとも、読者を科学や宇宙に誘う事は可能だ。
夢落ちでも怪奇落ちでもない、謎の解決があれば細部のサイエンスに拘らない。
その作品が設定した世界で解決すれば良く、その設定が読者に科学や宇宙と認識されれば「SF」設定で良いだろう。
東野圭吾の作品も、パラレルワールドでまとめてしまう人はいる。
ただし、理系作家の視点に科学が捕らえれておれば、もう「SF」小説と言って良いだろう。
「プラチナデータ」の設定は、造語と、DNA捜査の完璧なシステムとが背景にあり、すでに純科学からはクレームがありそうだ。
しかし、小説の設定としては充分に「科学」的であり、そこに人格の問題を加え謎を構成する。
そして、知識のあるものと捜査に詳しいものが、謎を追う。
見事な「SF」と「ミステリ」の融合する謎が設定された。
謎の追究に重点が置かれ進むが、「ハード」が少ない「SF」作者にも負けずに科学に取り組んで欲しいと思う。
科学というのは、実に夢がありファンタジーな世界なのだ。

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