今日泊亜蘭
1910年生まれで、2008年97才で死去。
日本SF初期から執筆し代表作は、この分野の古典とも言われていますが、作品の数は少ない。
元は教師であったが、小説も執筆し始めた。
日本最初のSF同人誌「宇宙塵」に参加して、このジャンルに入った。
1962年に「書き下ろしミステリー・シリーズ」叢書の東都ミステリーに「宇宙塵」連載の作品を完成させて発表した。
これが「光の塔」であり作者の代表作となった。
「東都ミステリー」は日本唯一の推理小説専門叢書となっているが、現在見ると内容にはそうとも言えない作品も多い。
SFと明記した「眉村卓」作品は除いても、時代小説やミステリーかどうか微妙な作品が含まれている。
本作もその一つで、作者は後書きで「出版社がミステリーとだんじた」としているが、今の広義のエンターテイメントだ。
既にSFという言葉は使用されていたが、独立分離はされていなかったのです。
実際に本書に推薦文を寄せている星新一も、ミステリー専門誌に多くの作品を発表している。
SF同人誌「宇宙塵」連載の「刈り得ざる種」を出版社要請で、完成させて書き下ろしで刊行した。
本書を本格科学小説と呼ぶ人も多いが、日本最初と呼ぶ人も中にはいます。
試行錯誤的に進んで来たジャンル故に、押川・海野・蘭・丘美・星田その他の作品の扱いを分けたのか、大げさな表現か、または
独自の根拠を持つものかは明らかでない。
作者は、併行して在野の言語学者だったとされている。
光の塔
舞台は21世紀の前半の東京で、ほぼ現在(2013年)に近い頃です。
東半球の広い範囲で停電がおき、火星から帰った少佐がこの停電に遭遇します。
近未来小説では、背景の時代になってしまう事もしばしばありますし、当然に小説と現実は違います。
エネルギーを盗み光の尖塔を作る侵略者に襲われてゆきます。
その弱点に気づいた主人公らが潜入すると、未来の地球人のミイラの様な姿に出会います。
原子力戦争の放射能によって衰えた未来の地球人が、過去を変える為に侵略してきた訳だった。そして・・・・・・・・・・・。
感想等
日本のSFに多いパターンが、初期から存在した感があります。
文明の栄枯盛衰をテーマにした、いわゆる東洋的無常感は、日本の作品に多く書かれており特徴とされています。
それを、過去を書き換えるための侵略にして、非侵略者側から描きます。
客観的または、タイムトラベラーから描く作品がこの後に多いが、非侵略者側から見ると謎解きにも見えます。
自然な発想か、発表叢書を意識したのかは不明ですが、事象だけを見ると海外作品にも多いテーマです。
未来科学小説が、科学の啓蒙と、宇宙への夢から広がりました。
そしてそれが、もっと多様なテーマに広がって行きました。
それが、SF小説の普及と発達であり、その時代に生まれるべき作品だったと言えます。
聡明期の作品故に、細部を調べることは、あまり意味がないでしょうし、時代設定の問題も同様です。
ただ、本作の続編長編も末期に書かれていますが、作品の絶対量の少なさは作者の主張を広める弱いでしょう。
別の作家で、行われている作品をこの作者はどのように、見ていたのかは、興味の有るところです。
多様化した分野は分類されますが、SF小説は性格的に特定のテーマに分けにくいです。
本作も、近未来小説になりそうですが、人類テーマにも、時間テーマにもなるでしょう。
ただ、ミステリーには分けにくいし、文章的にユーモアでは無いです。
後は気になるペンネームですが、他にも奇妙なものが複数あります。
名前まで奇をてらう必要はないという意見は、当時からあったようです。
作者のてれなのか、遊びか、第3者的に評判が良いという事はないでしょう。