星新一
日本SF界の発展に寄与した巨人です。
「誰か忘れていませんか?」と言われそうですが、膨大な数のショートショートと若干の長編作との間で「どれを」で迷います。
結局はどれでも良いが「ショートショート」を取り上げ様と思います。
長編「夢魔の標的」等も良いですが、「ショートショート」が星新一の為だけのジャンルの様な気がしています。
「ショートショート」について書いて見たいと思います。
その膨大な数の一部しか読んでいません。
最近の有名な研究書はそれ自身が大作です。
星新一=「ショートショート」と言うと失礼かも知れませんが、あえてその立場で進めます。
「ショートショート」という少ない文章で書ける内容は何かを掴んだ人、それが星新一でしょう。
妄想銀行
・妄想銀行:1968年>日本推理作家協会賞
・その他多数
「保証」「大黒さま」「あるスパイの物語」「住宅問題」「信念」「半人前」「変な客」。
「美味の秘密」「陰謀団ミダス」「さまよう犬」「女神」「海のハーブ」「ねらった弱味」。
「鍵」「繁栄への原理」「味ラジオ」「新しい人生」「古風な愛」「遭難」「金の力」。
「黄金の惑星」「敏感な動物」「宇宙の英雄」「魔法の大金」「声」「人間的」「破滅」。
「博士と殿さま」「小さな世界」「長生き競争」「とんでもないやつ」「妄想銀行」。
感想等
膨大な数のショートショート、そしてそれを多数収録した作品集、それが多数存在するのが星新一の世界です。
作品集「妄想銀行」は一例に過ぎませんが、一冊の収録作品数や題名を見ると多少のイメージが湧くと思います。
まさしく掌編の集まりです。そして個々の題名だけで読みたくなるネーミング・・・コピーライター的な感覚です。
日本文学でも夏目漱石や川端康成等で、掌編の作品集はありました。
しかしその作品集が沢山存在して、それが作家生活の中心というのは始めてでしょう。
そして、今後このような作家が生まれてくるのかは疑問です。
短いからと言って大量生産は出来ない。
1アイデアで1作品と言っても、次々とアイデアが生まれる訳でない。
原稿用紙換算での、枚数当たりの原稿料制の出版事情は、水増しのページ数の多い小説を生み出しても、短く推敲されたアイデアに満ちた掌編では作家生活は難しいでしょう。
ちなみに星氏も、原稿料の計算を考慮した方が・・という話はあったらしい。
実際は文庫化された作品集の増刷で収入になっていたと言われています。誰でもが出来る事ではありません。
「ショートショート」というジャンルが、星新一と共に成長してその死と共に消えていっても不思議はありません。
大作という言葉が小説の質ではなく量に対して使用される内は、第二の星新一は生まれないでしょう。
昔、ミステリ作家が「誰が多くの人を小説内で殺したか」が話題になり、結果はSF作家は人数の単位が違うとなったと言われています。
星新一の「ショートショート」には、星が爆発したり破壊したりして「億」「兆」単位の人間が死ぬ話が多数あります。
普通の探偵小説とは確かに、人数の単位が異なります。