佐々木丸美
佐々木丸美は、1949年生まれで2005年没の、日本のミステリー作家だ。
作者自身は本格ミステリや論理ミステリーを語った時もあった。
作品の内容は、変格ミステリに属する内容で、主人公の独白や妄想が物語を引っ張る事が多い。
デビュー初期には、殺人事件が起きて捜査する内容もあったが、次第にそれは少なくなった。
主人公は少女の場合が多く、幼少っだたり幼少の頃を回想したりする。
それは独自の世界を描く事になるが、乙女チックとの評価もあった。
館シリーズを書きはじめて、次第に幻想味が濃くなった。
話しの中心になるものが、建物だったり土地・風習だったり、変わって行く。
その先は、幻想からSFへ移って行ったとされる。
佐々木丸美は北海道在住で、マイペース(と見える)で長編を書いて行った。
刊行した本は、長編・作品集・オムニバス形式の長編を含めて17冊ある。
1985年頃に作品は途絶えて、一時はほぼ絶版になった。
その後に殆どが復刊されて、半数は文庫で出されて、入手が容易になっている。
榛家の伝説
「榛(はしばみ)家の伝説」は、「永遠の若さと健康」が母方の家系に遺産相続されるという家系の話しだ。
それの真実は誰が知っているのか、あるいは伝説の話しなのか。
文章で伝えられると言われるが、存在するのか、どのような内容なのか。
科学的な内容なのか、永く伝えられて来たのか?。
永く伝えられて来た内容ならば、現代の科学とは相容れないのではないか。
それは過去の家系を遡らないと判らないだろうか?。
徐々に増えて行く登場人物だが、誰が継承者なのか。
物語の着地は、謎の解明なのか、幻想的な世界なのか、それとも時を越えた架空の世界なのか。
感想等
佐々木丸美の作品は、弱さや危なさがストーリーと並行して流れる。
文体も華奢なイメージが強い、登場人物の思いや想像は妄想と思える内容が多い。
それは、本格探偵小説とすれば読者は何を信じれば良いのかを迷う。
それが幻想小説の世界を描くとすれば、それは良いかと思える事もある。
それが客観的にはどうかは小説では、示されなくとも良いかも知れない。
それがSFとなるとどうだろうか。
がちがちのハードSFで無いことは明らかだが、幻想系のSFでも科学空想小説なのだ。
いくつかの幻想系のSFは、緩い科学空想小説と呼ぶ事がある。
自然科学とか科学知識という言葉が登場するが、読者が信じるかどうかだ。
空想だがら、既に存在する必要はない、作者や読者が未来的に存在する可能性を感じるかどうかだ。
病気と健康は生き物と人間のテーマだ。
医学と薬学とが絡むと、一気に科学の世界に入る。
だが何時の時代でも、それだけで割り切れない部分はある。
科学の知識が増える程に、判らない部分や事が増える。
例えば、脳や免疫や遺伝の問題はその一つで、抗生物質や漢方薬が登場する。
「榛家の伝説」では、それがかなりの昔からある家系に相続されて来たという設定となる。
過去に遡り真実と真相を知りたいと考える。
そもそも、そのような昔から受け継ぐものとは何か、その昔には科学は進歩していなかった筈だ。
ならば、過去を調べると真相が判る筈だ・・・・資料以外は無理な筈だが・・。
現代のストーリーでも実験的な事が始まるが、関係者がそれを語る。
主観的な描写は幻想と妄想絡みで、内容は混沌とする。
主観的であやふやな見方から描く、科学空想小説は成立するのか。
そもそもそれは科学の世界なのだろうか。
科学の名を借りた、幻想小説に立ち止まっているだけなのだろうか。