山田正紀
1974年に本作の原型の中編でデビュー。
多作家ですが、いずれもレベルは高いです。
最近は、ミステリ作品が多くしかもそのレベルも高い。
SF、ミステリと問わず執筆量の多さと、しかしながらそのレベルの高さが驚きで迎えられている。
SFに関しては、そのテーマのスケールの大きさと、内容がテーマに負けない強いストーリー性を持っている事です。
神狩り
「神」3部作
・神狩り:1975年
・弥勒戦争:1975年
・神々の埋葬:1977年
「神狩り」は発見された「古代文字」が複雑な構造を持つ「神の言語」と考えそれを追及する「神狩り」グループが作られます。
ただそれをやめさせる警告があらわれます。
人間は「全能の神」にもて遊ばれてきたと考え、それを除くために神の言語の解読を進めます。
「弥勒戦争」は仏教の「救い」とは何かを探ります。
最終的な救済者と言われる「弥勒」とは。
そして「救い」は本当に存在するのでしょうか。
「神々の埋葬」では「モヘンジョダロ」の真相と第4次印パ戦争を舞台に神と戦います。
感想等
日本では「神」の存在・本質に関しては、興味が薄いかあるいは色々な考えを飲み込む所があります。
神の正体・神と人が戦うというと、宗教的に受け入れない地域が多いと予想します。
しかしひとたび宗教的な呪縛から逃れて見ると、「神」とは不思議な存在です。
人間が立ち入る事が出来ない領域に存在して絶対的な正しさを持っている事ははたして受け入れざるを得ない事かどうか。
歴史的に繰り返される宗教戦争は何故「神」は避けないのかと考えると、人間責任説と本書の「神は人間をもて遊んでいる」説に分かれても良いように思います。
日本または日本SFの風土には、後者をも受け入れる事が出来た事は本書にとって幸いでした。
日本SFには西洋・欧米とは異なる思想が存在する事は度々指摘されています。
本書のテーマ・思想もその一つなのでしょう。