横田順彌

この作者は「ハチャハチャSF」として知られています。
最初は普通の?、SFだったが、ユーモアSFというアドバイスで、書き始めたのが「ハチャハチャSF」だという。
ユーモアではなく、何故「ハチャハチャSF」なのかは、多数の要素が混ざった結果のユーモアSFだからと思えます。
パロディ・ギャグ・歴史解釈・科学解釈・・・・何でも、料理の仕方でユーモアに変わる。
ユーモアにも色々あり、笑い転げるものからブラックユーモアまで、どれかには当てはまるだろう。
特に多いのが、奇想で始まり、ギャグか駄洒落で終わるイメージだが、現実はそんなに狭くない。
横田順彌は、同時に「古典SF研究」「明治文化研究」の顔も持ちます。
初期から、「日本SFこてん古典」という研究・発掘著書が複数ありその影響は大きい。
その中でも押川春浪の研究が深く、その活躍した時代・明治を舞台にした小説発表と、研究「明治文化研究」へと進んで行きます。
「明治文化研究」はSFに留まらず、奇想小説・幻想小説まで含む内容で高い評価を得ています。

予期せぬ方程式

黄金の天馬
大正三年十一月十六日
予期せぬ方程式
新セックス薬
緊急着陸
タマよりも速く・・・
たぬきの泥舟
いつか訪れる日
地球滅亡
風流志道軒伝
西征快心篇

感想等

初期の「ハチャハチャSF」の短編集を取り上げたが、多彩というからには一例にすぎません。
自由に奇想を飛び交う小説が、当時はSF界くらいしか受け入れなかったようです。
現実は分類不明、ジャンル分けを拒むというのが真相に思えます。
短編集の表題作「予期せぬ方程式」は、あまりに有名な「冷たい方程式」を下敷きにしています。
宇宙航行の小型宇宙船には、最低限のエネルギーしかないので、密航者がいると無事には辿りつけないという方程式が存在するという話です。
この設定は多くの作者の興味を引き、多数のパロディやら別解釈が出されました。
本作は、それらの前例も下敷きにしています。
そして意外な事に、それ自体に新しい解釈もなければパロディもありません。
突然の読者の「予期せぬ」展開に切り替わり、なんとも言えない歴史解釈に切り替わります。
分類不可能ゆえの、「ハチャハチャSF」のゆえんでしょう。
横田順彌は、小説では日本SF大賞を受賞した「快男児 押川春浪」とそのきっかけとなった「火星人類の逆襲」を取りあげるべきかもしれません。
ただ、「明治文化研究」に繋がるもので、別項にしたい内容でもあります。
また、3部作と言われた「火星人類の逆襲」の第3作が発表されていない事情もあります。
奇想を自由に歩きまわる「ハチャハチャSF」は実は、膨大な知識が基礎にある事が判ります。
パロディは元ネタが必要で、別解釈ものは一般の元ネタとその一般解釈の知識が必要です。
「ハチャハチャSF」の書き手は実は、豊富な知識・読書・研究が前提なのです。

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