スタニスワフ・レム

2006年に死去した、スタニスワフ・レムは20世紀の代表的な作家です。
ポーランドの作家であり、原本はポーランド語ですが、ロシア語訳が標準とされる事が多い。
旧東欧で、非常な人気作家であり、日本でもいくつかの作品がロシア語訳から翻訳されてきました。
初期には当時の社会主義の影響が強く、のちに自身で否定している作品もあります。
日本での国際シンポジウム出席もあり、次第に西欧にも知られ始めたとされている。
作品は多彩で、かつ評論も多い。
本格的にSF、風刺・寓話的なSF、メタSFともメタフィクションとも言われるものなど多数あります。
日本では、ほとんどが紹介されているが、現実としてロシア語訳からの翻訳です。
時代背景等が影響しているので、活動も多彩で個々の作品も全体も評価も多彩と言えるでしょう。
作者の死去前後に、ポーランド語原典からの直接翻訳も行われた。

ソラリスの陽のもとに

原題は「Solaris」で、2003年にポーランド語からの訳では「ソラリス」となっている。
宇宙の中の不思議な星と、そこでの知的生命体との遭遇がテーマの作品の代表です。
二重星太陽の世界の惑星のソラリスは、二重星とは思えない安定した軌道が謎でした。
ソラリスのほぼ全体を覆う海と呼ばれるものが原因とされていたが、理由までは判らない。
新たな研究者が自殺して、ますます謎になる所へ、心理学者ケルビンが調査にくる。
ケルビンは、海との接触を試みて、亡くなった恋人が現れた。
心理的に思えるが、一方では実体にも思える彼女の存在は、彼を離れない。
個人的に苦悩する彼と、別の同僚の研究者たちには立場の違いが生じた。
そんななかで、強引に実験が行われる。

感想等

日本語で書かれた小説でさえ、その内容を理解する事は難しいです。
それが翻訳となるとどこまでが著者の意向を伝えているかは、想像でしかありません。
そして、いくつかの作者は原典の翻訳を、日本語翻訳の原典にしないとならない事情が発生します。
何か、重要なものが変わってしまっているのか、抜けているのか誤解されているのかの不安はあります。
特にSFでは、存在しないものを相手にする事が多く、原典の概念が伝わらない事が多そうに思えます。
この作品では、海と表現されているものの実体を、登場人物が理解出来ていない。
そのものを、読者が如何に解釈・理解出来るかが大きなポイントです。
ありえないと思うか、人間は理解出来ないと思うか、主人公の思考についてゆくのか。
正解がないものを、いくつかの見方で考える。
それは、読み飛ばすしかないのか、どこかに作者の答えをさがすのか、一体どうすれな良いのでしょうか。
ただ、作者が提示した答えがあったとして、それで納得できるかどうかも別問題です。
小説、特にSF小説では読者に答えをゆだねられる事は少なくありません。
謎は解けるとは言えない、人間は自身の知識で理解できる事などわずかであろう。
しかし、絶えずそれに臨む人もいる、そうではない人もいる。
テーマが、SF的なほうが客観的に考えやすいかどうかも問われています。

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