平井和正
SF+ハードボイルドを出発に多くのシリーズを書いた。
「エイトマン」の原作者でもある。
このシリーズは、最終作以外は兼業作家時の発表である。
「死霊狩り」シリーズ・「幻魔大戦」シリーズ・「悪霊の女王」シリーズ等多数。
「ウルフガイ」シリーズは代表的で、多くの作品があるが、内部でも分類されている。
「ウルフガイ」シリーズ
・「狼の紋章」
・「狼の怨歌」
・「狼のレクイエム」
・「狼男だよ」
・「狼のバラード」
・「魔境の狼男」
・「人狼戦線」
・「狼は泣かず」
・「人狼白書」
・「人狼天使」
主人公「犬神明」が少年のシリーズと、大人のルポライターのシリーズがあります。
どちらが先かは、微妙ですが大人の犬神明の「狼男だよ」が母体のようです。
間に中編が絡み、少年犬神明の登場と思われます。
ハードボイルド風の内容ですが、両者で微妙に違うと言われています。
軽い内容なのか、SF的ではないのか、破壊的なのか。
これらは、他の小説と同様に読者が判断するべきものでしょう。
感想等
そもそも狼男伝説の成立過程は、日本人とは密接とはいえません。
この作者には、狼と虎が多く登場しますが、日本人には虎のほうがイメージしやすいでしょう。
不死身の主人公や如何にも、ハードボイルド的なアクションと文体とストーリーが多いです。
そかし、主に登場するのは人間の残酷性・破壊性・・・きりがない程の暴力性です。
人間は動物であり、内部に秘めた上記が行動に表れる時は、決して少なくないと作者は考えています。
それは、作者の希望でも予言でもなく危惧かもしれません。
SF作家の妄想的な考えは、不思議な事に現実に近づく事があり、逆に恐ろしいことです。
21世紀の現在において、いくつかの事件に人間の残酷性を見る人は多いと思います。
作者は、その暴力に対抗する人間は登場させずに、狼男を登場させました。
人間同士の暴力性・残酷性を、描く事は選ばなかったと言えます。
その事で、読者は狼男を通して、人間の暴力性・残酷性を読む事になりました。
ともすれば、それは娯楽性にも通じます。
しかし、いつか目覚める人間の動物性・そして本能的な暴力性・残酷性を予見した作者のこのシリーズを異なる見方で読む事が現実になる時代の到来の恐ろしさにも気づくべきなのでしょう。