ディッシュ
1940年アメリカ生まれで、ニューヨークの青年時代から小説を書いています。
初期のSFには、暗いテーマ「終末」「破滅」が多いとされていますが、次第に広い内容を手がけています。
はやくから才能を認められていましたが、寡作に属する作家です。
SF以外の小説も書いています。
歌の翼に
・歌の翼に:原書連載:1979年2月-4月
・歌の翼に・1980年日本語訳
飛翔=空を飛ぶという事が可能な世界が舞台です。
しかしそれは禁じられています。
刑務所は監禁の代わりに、人体に無線操作の爆発物を埋め込む事を行います。
飛翔は、基地にある飛翔装置に入り歌を歌うことで精神を解放して行う事ができます。
しかしこれが可能なのは、才能と技術が必要です。
少年が、飛翔という夢を持ち続けながら、成長し色々な経験を経て、飛翔にいどむ事が描かれています。
そして、その結果は・・・・。
感想等
空を飛ぶという事は、SF小説に度々登場するテーマです。
ある作家がそのテーマに取り組むときは、それをどのように取り組むのかが注目されます。
「歌の翼に」は、少年が飛翔願望を持ちながら成長してゆき、遂に飛翔装置に入りいどむ過程を描いています。
飛翔という事が、それを達成しようとする者の精神の解放であるというのが大きなテーマです。
同時に、才能と技術という限られた者だけに可能とする事が出来ることも、人間の成長過程で可能かどうか自覚できるか?。
しかも、技術と言ってもそれを学ぶ事自体が禁止されている状態です。
この設定では、飛翔を夢見る少年にとって、それははてしなく困難な事でしかも長い歳月の内にどのように変わってゆくのかという問題をかかえます。
とても、歌を歌って精神を解放して空を飛ぶという明るい話題ではないのです。
そもそも精神を解放するという事は、その後に何があるのかさえ知る事もできません。
読者にとって、少年の願望は、非常に多くの困難と障害に阻まれているとしか思えません。
夢・願望というよりも、むしろ挫折・破滅を連想させるかも知れません。