新井素子
高校在学中に雑誌「奇想天外」新人賞でデビューする。
少女が日常に会話するままの文体での小説というスタイルは、通常の理解を超えており審査員を悩ました。
その中で、星新一の絶賛から入選となった。そして、現実にその文体は殆どの読者を驚かせました。
第2次の口語体と文体の一致と言う人もあれば、とても読めないという人もいました。
文体だけでなく、素朴な発想から始まって次第にエスカレートしてゆき、とんでもない落とし所に達するストーリーも同様に当時もそして今も独自のもので、これまた賛否が続いています。
とにかく、本人が何をどのようにどれだけの量で、最後はどのように書くのかは、実際に書かないと判らないと言っている様に出発となる発想と書いてゆく中で広がるイメージとストーリーが、できあがらないと判らないという編集者泣かせの作家です。
その奇想的な発想ゆえにSF作家とされていますが、中間小説やエッセイ風やホラー風や幻想風と広い内容を書いているので、こちらも得体がしれません。
ただ、中間小説が現在のライトノベルの先駆けになったと言う意見は多くの人が賛成しています。
文体については、表だった賛成派は少ないが隠れ愛好家はかなり存在する可能性はあります。
一般的には、その奇想と独自性の作品を通常の文体で書いて欲しいという意見は表だっては多いです。
確かに小説としては、独得のものであるし主流になることもありません。
ただ広いメディアで見ると影響はありそうにも思えます。
(日常会話体の小説ですから、アニメやドラマにするとその文体が普通の会話になり、判断出来ないのです)
自然科学音痴を自認する作者の、作品・エッセイは無知を通りこして天然かユーモアとしてとらえられています。
そう、奇想とユーモアとの結び付きもこの作者の持つ一面の特徴です。
どこまでが、天然か不明であり私と1世代も離れていない作者ですが、未だに書く内容に少女的な一面が登場するように思います。
他に多くの影響を与えている筈だが、ひとり=1作風の独自作家だろうと感じます。
チグリスとユーフラテス
・チグリスとユーフラテス
1st マリア・D
2nd ダイアナ・B・ナイン
3rd 関口朋実(トモミ・S・ナイン)
4th レイディ・アカリ
あとがき
雑誌に各章ごとに、合計2年にわたり連載されました。
その遅れと、特に4章の予想外の長大化の事は作者があとがきに書いています。
本当に編集者泣かせの執筆状況が判ります。
感想等
惑星ナインは、運営の失敗等で小人化が進み、ついに少女「ルナ」ひとりになってしまいます。
「ルナ」の取った行動は、「コールドスリープ」状態にあった4つを目覚めさせることでした。
目覚めた4人から見た(正確ではないが)状況が4つの章で語られます。
それは4名の女性からみた惑星の歴史・自身の生き方・そして・・・・。
未来はきっと良いだろうという希望で作られた「コールドスリープ」ですが、そこから目覚めさせられると滅びる間際の世界とは迷惑な話です。
しかし、それぞれに「コールドスリープ」に入るまえの生き方に考えさせられる事があります。
極限の中で、個人の生き方を思い起こすということは何か。
少女をふくめた5名の女性の生き方・考え方で小説が構成されているといえます。。
細部の設定や終わり方のみをとらえて、異なる解釈もあるようですが、作者の意識にはなかったと思えます。
以前として残る口語体文体は、改めてどうこういう事でもないでしょう。
難しいテーマを、易しそうに書いたという意見も同様に結果としか言えないと思います。
全てを含めて、この作者の小説なのだと思います。