半村良

幅広いジャンルを対象とする作家。
超長編も多数書いています。
特に歴史・伝説・伝奇をキーワードにした作品が多いです。作品の中心が伝奇SFと定義する場合もあります。
特にデビュー時は、伝奇SFの大作を連続して書いており、読者によりその時代に限っても代表作がわかれます。
平均的には、本作:産霊山秘録(むすびのやまひろく)と石の血脈の支持が多いと思います。
歴史の影に隠れた存在が、ある時代で歴史の表にあらわれる構成と長い歴史の継続が、作品のスケールを大きくしています。
その後は、より大作を手がけたり、技巧的な作品を書いたりしました。そして、怪談・風俗・時代小説と幅が広がってゆきます。

産霊山秘録

伝奇SF

・石の血脈:1971年
・産霊山秘録:1973年
・黄金伝説:1973年
・英雄伝説:1973年
・平家伝説:1974年


歴史上の実在人物か架空の人物かで、分類するのは分けにくい作品もあります。
史実かどうかで分けるのは、小説の世界では分類としてどうでしょうか。
ひとりの人物が活躍するのは、長い歴史では極めて短い時間です。 もし作者が、長い時間スケールの作品を書くするとそこには、一族の継承かSF的な設定が必要になります。
そしてそこには、史実の解釈を超えた作者の思想が必要になります。
読者は小説と作者の思想の双方を読む事になります。
戦国時代から始まり、未来に繋がる産霊山秘録の世界は、一族・子孫をつなげてゆく作品です。
登場人物が歴史上で有名な人物に設定してありますが、影の歴史を時代を超えて描く事で手法として有用と考えたからでしょう。

感想等

伝奇的SF・時間を超えたSFは日本SF作家が多く手がけています。
理由のひとつには、西洋の歴史観と東洋の歴史観あるいは日本の歴史観に差があるからでしょう。
過去から未来へ広がる歴史を題材にする事は、まさしく思想の表現といえるでしょう。
そして、SFというジャンルはそれに適しているといえます。
歴史には多くの謎があり、多くの解釈があります。
未来はそれ以上とも言えるでしょう。
伝奇SFが扱う世界は、無限の謎と解釈と思想のるつぼです。

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