高橋鐵
高橋鐵は、精神分析でフロイドを研究していたが、突如として怪奇小説を書き始めた。
僅か2-3年の執筆期間で、書くのを止めたが、他の仕事への為とも戦前ゆえに、小説内容から禁止処分があったともされる。
その後は、性科学の研究と性風俗雑誌編集で、有名となった。
この時代でも、発禁処分が度々あったと言われている。
そして、この時期の活動で著名であり、怪奇小説執筆はマイナー活動と紹介される事が多い。
その理由は、戦前に出版した2冊の作品集「世界神秘鄕」「南方夢幻鄕」が入手困難だった事も大きい。
「世界神秘鄕」は1度復刊されたきりで、本としては2014年に双方が復刊されるまでマイナーだった。
個々の短編の一部は、雑誌やアンソロジーに掲載されていて、そこで知られていた。
今でも、知名度では小説は副業的な印象だろう。
世界神秘鄕
作品は全て短編であり、そこから「世界神秘鄕」「南方夢幻鄕」が編まれた。
「南方夢幻鄕」には、日本から見た南方を舞台にという意味がある。
ただし、作品は日本各地や、世界各地に及ぶ。
題名に寄らず、2冊ともに同じジャンル・内容と見る事が出来る。
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目次
孤島の瞳人
明笛魔曲
氷人創世記
太古の血
天童殺し痛恨記-「イサベラおすず懺悔録」
野獣園秘事
メディア媛の触手
あとがき
感想等
怪奇小説は作者事の個性があり、明確な定義は出来ない。
日本では主に戦前に書かれていて、戦後は香山滋が有名だ。
戦前は小栗虫太郎や橘外男などメジャーな作家が活躍した。
高橋鐵の作品が入手困難になったのは、作品数が少ない・本業でない事が大きいようだ。
小説家として埋もれる事で作品も埋もれたと言える。
高橋鐵の怪奇小説は、科学や精神分析を思想的にあるいは小説の隠し味に用いた事が特徴だ。
純な空想科学小説ではないが、科学がついて廻るのでSFに入れてもよいと思う。
近い作品として、小栗虫太郎の秘境小説が該当する。
世界各地や日本の秘境や、都会の片隅や地下などを舞台にしている。
小栗も科学や精神分析の知識を作品中に取り入れている。
高橋鐵は、取り入れるというよりも発想の起点としていると思う。
精神分析を起点としている場合は、それが明確に伝わる。
戦後のSFは、秘境よりも宇宙を舞台にした。
秘境と宇宙とを、空想で比較しても意味はないが、秘境を描いた作家がもし宇宙を舞台にしたらと考える事は多い。
科学が宇宙に広がるには、書かれた時代があるかとも思う。
ガリレオの様に例外や先駆的な作品は存在するが・・。