佐野洋
1958年に読売新聞社在籍中に雑誌「宝石」に「銅婚式」でデビュー。
ミステリ作家として活躍していますが、初期は純文学系で活躍した。
ミステリに転身してから上記で作家となった。
初期は純文学論を、ミステリ転身後は多くのミステリ論を戦わせた。
「推理日記」はその代表として有名です。
独自のミステリ理論を持ち、名探偵不要論など多く発表している。
同時に実作も、多数発表しておりジャンルも多彩です。
それらを課題とした連作なども手がけました。
その多彩なジャンルのひとつが、SF設定のミステリ(あるいはミステリ風のSF)です。
透明受胎
・透明受胎:1965年
主人公が交通事故にあった相手は、年齢が非常に若く見える女性でした。
そして主人公も急に年をとった様でした。
その後に、再開した二人は結ばれたが、女性の主張は理解しにくいものでした。
その頃別の所で事件が起きて、女性が疑われる事になった。
しかし明確なアリバイがあります。
すると、姿が同じ人間が二人存在する事になります。
主人公が調べると、女性に娘が存在して姿・顔・指紋まで同じという事が分かります。
たどりついた先は、処女生殖・受胎であり、いく例か報告されており有名なのが「プラハレディ」でした。
「プラハレディ」には色々な特徴があり、しかもナチスとの関係が出て来ます。
感想等
佐野洋は、自身のミステリ論・小説論を多く書いています。
その中で「ある飛躍を受けいれば、SFも普通の小説と変わりはない」としています。
その考えをもとに謎の追究をSF的な設定で試みました。
それは成功して、ミステリの可能性を広げたとされています。
21世紀の現代では、上記は普通の考え方になりSF設定のミステリや、SFにミステリ要素を含む作品が多数書かれています。
広義のエンターテイメントとしてボーダーレスに双方のジャンルで活躍する作家が多数います。
佐野は、「透明受胎」の前に短編集「金属音病事件」を1961年に刊行してこのジャンルの統合に踏み込んでいます。
「ある飛躍」という面は非常に効果的で、全てSF設定よりも一部のみSF設定の方が真実味があるというか、謎が現実的に感じる事が出来ます。
あるSF作家は、「プラハレディ」の存在を信じたとも噂があります。
21世紀はクローン人間や遺伝子制御とうの技術の発達で、このジャンルは妙な位置に存在します。
ただ、あまりアイデアや空想よりも現実が強くて、SF設定にしてもどこかロマンが少ないように思います。
本書の時代は、まさしく読者を空想と謎の世界に引き込む時代であり、作者の巧妙な構成とあいまって、ミステリとSFのどちらのジャンルとして見ても1級の作品といえます。