上田早夕里

上田早夕里は、2003年に「小松左京賞」第4回受賞で登場しました。
昔も今も、SFの公募新人賞は少ないです。
そして、受賞者といえど発表の場は多くはありません。
SFに拘らずに、作品を書いていると次第に、SFの注文も増えるというパターンです。
この作者は、デピューからの発表作が既に多数のジャンルに渡っています。
作者の資質なのか、発表の場を求めているのか、早くからジャンルを広げようと意識しているのかは不明です。
そもそも、幻想系SFとうのは、サイエンス・フィクションとは異なり、必要な知識が異なります。
SF小説に拘る理由がないジャンルと言えます。

火星ダークバラード

「火星ダークバラード」 :2003/12

「火星ダークバラード」 文庫版・全面改稿:2008/10

「小松左京賞」受賞の、初長編です。
筆者は文庫版で読みましたが、ハードカバー初稿とは、大幅に改稿されていると説明されています。
SFの舞台と設定を背景にした、ハードボイルド的な主人公が活躍する話です。
冤罪を負った主人公と、出会った人物の謎と色々な要素が絡みあいます。
背景の予測不能さが、増幅させるサスペンス性の強いストーリーです。
宇宙の治安管理局を、現代の警察等の組織にすれば普通の警察小説のなりそうに思います。

感想等

この作者は、デビュー後あまり時間がたっていなく、作品も多いとはいえません。
しかし、その題材・背景・ジャンルは多彩で有ることは、読者に認識されています。
ジャンル分けは、必要ないとも言えますが、多くの叢書・書店・ネットショップやオークションがカテゴリ分けされています。
どこを探せば良いか判らないのは、結構困った事が多いです。
本作者は、もうひとつの性格として作品内容もジャンルが曖昧というか複数のジャンル要素を含むことです。
いわば、バイブリッドとかヘテロとかの状態です。
従って、読み終わるまでは油断がなりません。
SFの要素のひとつに、奇想があるとすれば、読者に予測させない作品内容は、それと等しい効果があります。
最近の本は、帯とか解説とか書評とか読んでから、本体を選ぶ・読む人もいるそうです。
ただ、本作者のようなタイプでは、他人の読書感想や書評や、口蓋はマイマスになる可能性もあります。
蓋を開けたらばびっくり=読んで見て始めて判る・・・それがこの作者には似合っています。
勿論ですが、人間としての要素もかなりあります。
うっかり忘れそうな作品が多いですが、人間関係や愛とかが切り離せない要素になっている事も多いです。
さて、この作者の今後の方向は・・という質問は無理な事です。
この本と同じ傾向が読みたいも、難しいかもしれません。
何を書くかが既に、奇想の世界です。

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