谷甲州

谷甲州は、1979年に雑誌「奇想天外」の第2回短編コンクールで登場しました。
当時のペンネームは「甲州」であり応募元がネパールだったが、SF界は何でもありで審査員の星新一・筒井康隆・小松左京もあまり信じていない様だった。
受賞作の「137機動旅団」はベトナム戦争の非戦闘員の虐殺疑惑に似たシーンがあり、ますます不思議な応募者だった。
結局、筒井の推薦が強く、受賞する形になった。
「奇想天外」に短編と、長編「CB-8越冬隊」を連載して完結後にペンネームと題名を一部変更して、「谷甲州:惑星CB-8越冬隊」として初長編として刊行された。
その後、奇想天外誌の廃刊を挟んで、「航空宇宙軍史」「ヴァレリア・ファイル」シリーズを書き継いだ。
その後は、冒険小説・山岳小説が中心になった。
SF小説にも、冒険小説の色合いが濃いし、戦闘シーンも多い。

惑星CB-8越冬隊

「惑星CB-8越冬隊」 :1981

谷甲州名義の、初長編です。
表のテーマは、よくある未知の惑星探査であり、年間観測のために越冬隊を送るという、強引な計画です。
勿論、未知の惑星が想定内だと物語にはなりません。
かくして、冒険SFが始まりました。
作者自身は、その中に登場する「星間を移動する渡り鳥」をイメージしたのが構想のはじめとしています。
それ自身は、本編とあまり関係ないが、魅力的な光景と発想です。
マニア向けの、雑誌から一般向けの単行本化するにあたって、ペンネームと題名を判りやすく変更したのは、出版界の常識と言えるでしょう。

感想等

当時、雑誌「奇想天外」購読者としては、新人賞は作品よりも、恒例の審査員の座談会が売りであり楽しみでした。
噂では、あいまいに書いて応募すると、審査員の誰かが深く読んで作者の構想以上に評価すると言われてもいました。
短い回数でしたが、第1回の新井素子・第2回の谷甲州の、その後の活躍で十分に役目は果たしたと言えるでしょう。
疑惑??のネパールからの応募者も、山好きの青年海外協力隊だった様で、しばらく後から日本在住になります。
本作者は、SF設定と冒険小説・シミュレーション小説・軍事小説等をあわせた内容が主流になります。
その意味では、受賞短編・初長編共にすでに、作者の方向性が出ています。
「火星鉄道一九」「終わりなき索敵」を代表とする「航空宇宙軍史シリーズ」への道も自然です。
いくつかのシリーズの後で、SF以外の冒険小説・山岳小説主体になっても、特に違和感がなかった様です。
ただシュミレーション小説以外では、戦闘場面は向きませんが・・・。
「惑星CB-8越冬隊」に関しては、未知の惑星の有人探査という設定はかなり無理がありますが、全体に読ませる内容です。
作者の経歴からか、独自の未来史観が時々登場する、その後の多数の作品は個々ではなく、連続して読む必要が生じました。
いわゆる、大作作家的な進みかたになりました。
マニアック過ぎる面があり、単発長編の非SFへの進出は読者を広げた形になったのは、SFにとってどう評価するべきでしょうか。
SFの世界が、少ない制約で色々な事が可能な分野である事は確かです。
特に、なかなか日本では少集数派のハードSFの作者としては、まだまだ活躍を期待したいです。
「日本沈没・第2部」の共同執筆者の、再登場となりました。

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