三雲岳斗

三雲岳斗は、1998-1999年に、シナリオ・SF・ライトノベルで連続して新人賞になりデビューしました。
従って、SFのみの作家ではありません。
元々、SFは狭いジャンルにとらわれずに、自由な着想でストーリーを作りあげますので、活動範囲を狭く考える必要はありません。
日本SF大賞新人賞でデビューした作品自体が、SF設定の元で起きる本格ミステリの作品です。
海外では、アイザック・アシモフを代表に知られますし、日本でも最近増えています。
本作者が、日本SF作家クラブの他に日本推理作家協会や本格ミステリクラブの会員である事は何も、不思議でありません。
多様な作品の中で、SF設定の中での本格ミステリ作品も、この作者の大きな部分です。
設定は、近未来で科学知識を中心に構成されていますので、ハードSFと言えるでしょう。

海底密室

「海底密室」 :2000/9

新人賞受賞の「M.G.H.」は人工衛星・宇宙生活空間での事件です。
それに次ぐ、「海底密室」は題名の通りに、深海に作られた生活空間での事件の謎と解決が描かれています。
いずれも、現在知られている科学知識の延長上で、考えて推理する事が可能です。
「アクアスフィア計画」>深海底生活圏実験計画を実施する設備に、多くの人材が集まっています。
そこへ取材のジャーナリストが訪れる所から話が始まります。
通称「バブル」と呼ばれる施設は、房総半島沖200kmの深海4000mにあります。
海上のプラットフォームへ行き、そこから海中に潜ります。

感想等

SF新人賞の第2作なので、SFとして出版されました。
ただ山田正紀は、新人賞受賞作の「M.G.H.」はSFミステリーであり、本作は本格ミステリだとしています。
つまり、設定の中にSFとまで言えなくて良い程度の設定であると、見ています。
どこかが違うかは、個人で異なるでしょう。
科学的に想定される範囲の中に収まっているのか、まだ未知の空想の設定が含まれているのかの違いでしょう。
科学技術以外の未来予測に関しても、同様の事がいえますので、近未来小説はどれも、SFかどうかは微妙な境界にあると言えます。
SF設定か、現実の知識の延長にあるのかを除くと、ミステリの閉ざされた空間ものに分類される可能性が高いです。
科学知識を利用した作品では、近未来が合うように思います。
その内容では、読者の個々の科学知識の持ち方で、現実の範囲か、近未来か、架空設定かが変わります。
この設定では、閉ざされた空間での可能な事が、かなり広くなります。
従って、設定が広がった分だけ、内容が広いでは当然になります。
やはり、設定がプラスアルファならば、内容はそれを上回る必要があります。
それには、科学知識の広い適応と部分的でない、広い範囲での矛盾のない取り込みが必要です。
本書は、SFとも、それの要素のないミステリともとれる内容です。
それは、作者が先端技術や知識を、うまく小説に溶け込ませたと読み取れます。

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