堀晃

SFの原点ともいえる、サイエンス・フィクションは「ハードSF」と呼びます。
ジャンル分けというのは、あくまでも便宜的で1ジャンルの中でも色の濃さはまちまちです。
日本では、色の濃いハードSFは非常に少ないと思います。
ただこれは量的な面で、質的には優れた作品が多く書かれています。
アメリカの、ハル・クレメントは兼業作家ながら代表的な位置を占めていますが、日本でも兼業作家はいます。
堀晃は、典型的な理系出身で終始兼業で寡作ながら、個々の作品のレベルは非常に高いです。
堀の作品は、大きく3つに分けられます。
1:トリニティ・シリーズ、
2:情報サイボーグ・シリーズ、
3:その他 です。
第1回日本SF大賞を短編集「太陽風交点」で受賞した事は、作者にとっても日本SF界の歴史でも大きい出来事だったと思います。

トリニティ・シリーズ

短編

・「太陽風交点」「遺跡の声」「塩の指」「密の底」「沈黙の波動」「ペルセウスの指」

作品集

・「遺跡の声」

短編集「太陽風交点」「梅田地下オデッセイ」「恐怖省」
に3ジャンルが混ざって出版された。のちに「トリニティ・シリーズ」は「遺跡の声」にまとめられた。


「トリニティ」は「三位一体」を意味する言葉で、堀晃の作品では主人公のひとりである宇宙飛行士が出会った「結晶生命体」をこの様に呼びます。
作品の発表順と実際の時間の経過は一致していないです。
第1作目の「遺跡の声」が「トリニティ」との別れを描いた作品で、第2作の「太陽風交点」が宇宙飛行士と「トリニティ」との出会いになります。
その他の作品は、その間になりふたり??が訪れた星で遭遇する事件を描いています。
「トリニティ」は当然ながら人間とは全く異なる能力を持っており、単純にいえば「トリニティ」が頭脳で宇宙飛行士が 足や行動の役をするというイメージがあります。
人間以外の頭脳を持つ事で、宇宙での色々な遭遇に対して人間の能力を超えた対応が可能であり、作者の科学知識と 自由で奔放な発想が作品として生かされています。

感想等

堀晃が終始正確な科学知識と発想で、ハードSFを書き続けた事は兼業作家で寡作だった事と無関係ではないと思います。
日本では英語圏とは異なり、本を1冊出版しても読者数は限られます。
英語圏のように寡作でも専業作家でおられる事はかなり難しい事情があります。
そしてハードSFは、色々なジャンルの中でも量産がきかないとされています。
堀晃は、学生時代から小説を書きはじめていますから、作家期間の長さと作品数の少なさとを合わせると驚くばかりです。
ハードSFは特にアイデアが大きな比重を占めますが、登場人物や背景をシリーズ化する事で作者も読者も負担を少なくできると思います。
従って、シリーズ化は好ましいと考えます。

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