夢枕獏

作家前の経歴や、作家になった後の書いた内容も多彩です。
山小屋暮らしの経験から、初期から山岳小説も書いています。
本人は、「エロスとバイオレンスとオカルトの作家」と言ったとされています。
安部晴明を題材にしたり、格闘技を題材にしたり、旅行・釣り・山登り等も題材です。
漫画マニアとも言われ、漫画・劇画の原作になった作品も多い。
発表誌には、ジュニア向けや少女向けもあり、作家として広い幅で書いています。
一時は他のSF作家と同様に、長編が完結しない作家とされた時もあるようです。
確かに長編は、大作が多く書き始めたら次々構想が拡がってしまった感がありそうです。

ねこひきのオルオラネ

著者の第1作品集の題名でもあり、その中の1作でもあります。
作品「ねこひきのオルオラネ」は、音楽の楽器のように猫を弾いて音楽を奏でる話です。
登場人物、背景、発想共に幻想と空想に満ちており代表作です。
ただし作者は、すでにデビュー当時から多彩なジャンルの作品を手がけています。
それは、比較をする事自体が困難な多彩さです。
とりあえず、幻想味に限っても、ちょっと風変わりな内容です。
音楽という、文章ではあらわせないものを、あえて文章で表した??内容は既に異色です。
まるで、劇画風か?少なくても純粋な散文風ではなかった。
当時から、SF界には似た例はありましたが、中間的でした。

感想等

この作家は個別作品を取り上げる時は、その作品で随分印象が変わってしまいます。
そもそもジャンル分けすれば広く、それぞれが異なる見方が出来てしまうでしょう。
「ねこひきのオルオラネ」は、シンプルな幻想・メルヘンとして見ると判り易いです。
しかし、深く内容に入りこむと、何故?の繰り返しになります。
内容的にはオカルトとは無縁ですが、猫という生き物を使うのは何故と考えると、無縁で無くなるかも知れません。
そもそも老人が、何故猫ひきなのか、何故猫は弾かれるのかを考えると、猫の描写が印象的過ぎるでしょう。
本当にただの猫なのか、どこか猫には女性的な面があり、それを自由にする行為に別の見方があるとも言えます。
主人公は、猫でもオルオラネでもなく、それに出会った青年たちとも言えます。
迷い多き青年達には、身をまかす猫と自由にあやつるオルオラネが与える印象は大きいでしょう。
メルヘンで終わるか、より深く入ってしまうかは読者次第でしょう。
この作者の作品には、表面的なものと、そこから深く入る余地があります。
どちらでも、読者に任せられるというのは、計算なのか感性なのでしょうか。
ただ、平均して大きなものや強い者を描く事が多いなかで紛れ込んだメルヘンは微妙です。
一時のやすやぎなのか、逆に深い世界に誘われるのでしょうか。

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