最相葉月

ノンフィクション作家です。
対象ジャンルは、科学技術と人、スポーツ、教育など多彩です。
科学技術とSFは本来は近かったが、拡がった現在では一部の重なりとも言えます。
従って、小説の感想のサイトだが、対象はノンフィクションです。
星新一の評伝ですが、他に「あのころの未来 星新一の預言」があります。
ショートショートで多彩な対象を書いた星新一とその作品への関心は深い。
そして、資料主義で膨大な資料を基に構成した、この評伝は決定版的とも言われる。
個人の評伝の形だが、日本のSF創生期自体も詳しい。

星新一:1001話を作った人

序章:帽子
第1章:パッカードと骸骨
第2章:溶けた鉄 澄んだ空
第3章:解放の時代
第4章:空白の6年間
第5章:円盤と宝石
第6章:ボッコちゃん
第7章:バイロン卿の夢
第8章:思索販売業
第9章:あのころの未来
第10章:頭の大きなロボット
第11章:カウントダウン1001話
第12章:東京に原爆を!
終章:鍵

感想等

SF小説の読書サイトに、いきなり登場させた作家の評伝です。
題名では、1001話となっているが実際はもっと多いと思われる作品、ショートショートを書いた作家が相手です。
個々は短くても、流石につもれば、多数の本となって残っています。
そしてそれは、日本SF小説の歴史と密接に繋がっています。
日本では、アマチュア愛好家たちのグループの活動と、プロとして活動した人との微妙な関係で発展しました。
星新一がその中では微妙な位置にいましたが、むしろ対外的にSFを広めた事がこの本で判ります。
星新一という人物の生い立ちや風貌が、マスコミに取り上げられる事が多かった。
SFを理解していない雑誌等でも、ショートショートという短い枚数は取上やすかったという事情。
アイデアを、長編に使わず枯渇を恐れずに、短いショートショートで使ってしまう性格と才能の存在。
星新一の存在は極めて特殊であり、他の道もあったが何故に苦難の道を選んだのか。
詳細な資料に基づく評伝は、読者に回答例と、個々の回答を求める様です。
効率とか収入とか、楽な生活とかの為に作家になるとかとは、異なる人生なのでしょう。
星新一の選択が正しいかどうかは誰にも判らないが、日本SF界に取っては貴重な選択だったと言えます。
SFはモダンで新しいというイメージや、科学的や創造的とのイメージも星新一の影響は大きい。
あるジャンルの繁栄には、どこかに複数の星新一的な人物が登場する事が必要なのでしょう。
今から、星新一作品を読もうとする人達、日本SFの歴史を調べたい人達、あるいはアイデアはどこまでうまれるのかに興味のある人達、・・・・色々な動機の人にも読んで見て欲しい評伝です。

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