眉村卓

1961年にSF作家としてデビュー、「燃える傾斜」で長編デビューし、1979年「消滅の光輪」で泉鏡花賞受賞して日本SF界の最先端を走りました。
質・量共に、日本SFを代表する作家ですが、その視野は文明や体制側と社会内の人間とを描く事に関わっています。
社会の外からか、あるいは風刺的に見るSFが多い中で内部からも見ようとする姿勢は議論の対象となった事もあります。
未来社会を描くときにロボットと人間の関わりを強く描くのは、文明への関心とアシモフ等の海外SFの影響ともいわれます。

司政官

・司政官:短編集:1974年
・消滅の光輪:1979年
・長い暁:短編集:1980年
・引き潮のとき:1995年


2大長編は、時代的には2短編集の次の未来にあたりますが、まさしく大長編です。
宇宙に地球型の惑星を発見して、そこに管理者として「司政官」を置き、移住を始めるという体制側の支配方針です。
初期には「司政官」の役割も理解されておらず、権限もあいまいですしましてやロボットと司政官との関係も広く知られていません。
次第に時代が過ぎると、次第に司政官の役割も大きくなります。
しかしそのシステムにはロボットの組織が重要になっています。
原住民に強く関わらず、居住民とも距離をおく立場は、しだいに崩れてゆきます。
これは、文明のたどる道として描かれています。
1人の司政官とロボット組織が、惑星を支配する状況がいかに作られるか。
それが文明の進歩とともに如何に変質してゆくかが描かれています。

感想等

長期に渡って書かれたシリーズですが、極端に多いシリーズではありません。
とは言っても、長編を全て読めてはいません。
作品発表順も、時代順ではなく作者の構想を発表順で知る事は予想の範囲です。
絶対的な一人の管理者とそれを維持するロボット組織は、どのような文明の状況では有効か?。
未発達の時は問題が多く、その文明が確立してくると司政官の仕事はかなり形式的になります。
そして司政官の存在自体が、必要なのか役割はどのようであるべきかを考える状況に変わってゆきます。
ロボットでツリー状に、造られた命令系統組織はある時期は、人間が関わらずとも管理出来る体制とも言えます。
ただ、文明の進化に伴う変化に対しては、司政官が異なる対応を選択する必要になります。
このシリーズは、読者によって関心のある部分が異なるでしょう。
作者の描く文明論に同調できる人、細部の事件には疑問を持つ人、ロボット組織に関心がある人、
そしてその組織の頂点になぜ司政官の存在が必要かを直ぐに納得できるか、納得出来ないか双方の人、
それは逆にこのシリーズの醍醐味でしょう。
司政官の視点から描かれても、登場するそれぞれの立場で見ると全く異なる世界が見えるという作品群です。

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