高千穂遙

元々は、SFのアートから小説に入ったがジャンルの広がりに大きな影響を与えました。
具体的には、スペース・オペラの日本での開拓者ともいえます。
そして、複数のシリーズで日本での、ヒロイック・ファンタジーの急激な広がりの開始者となりました。
SFというのは、ジャンル分けすれば無限大に近いものです。
題材に制約がなく、自由に表現できるものですが、それでも最初に書いた作者はいるのです。
アートと同様にプロレスにも詳しく、ペンネームもそれに由来します。
「ダーティペア・シリーズ」もやはりそれを意識していると言えます。
このシリーズで、星雲賞の短編部門と長編部門を受賞しています。

ダーティペア・シリーズ

ダーティペアの大冒険 1980/05
ダーティペアの大逆転 1988/04
ダーティペアの大乱戦 1989/08
ダーティペアの大脱走 1995/07
ダーティペアの大復活 2007/01
ダーティペアの大征服 2006/04
ダーティペアの大帝国 2007/10
ダーティペア外伝 独裁者の遺産 2001/01

時代は、22世紀で、銀河連合が設置したトラブル対処専門機関の「WWWA(World Welfare Works Association―世界福祉事業協会)が舞台です。
そこの「犯罪トラブルコンサルタント」の「ラブリーエンゼル」こと「ダーティペア」の美少女2人「ケイ」と「ユリ」が活躍します。
「ラブリーエンゼル」はコードネームだが、二人の仕事のあとは悲惨な結果が残る事から、「ダーティペア」の別名があります。
二人は千里眼的な超能力を持ち、難事件に対処できるのでクビにならないでいます。
二人の外見や服装は、非常に露出度の高いビジュアルなものであり、その後の多くの作品に影響をあたえました。
性格や言葉のやりとりも多く、パーソナルデータは豊富です。

感想等

SFを科学系と幻想系に分ける事は多いですが、後者はむしろその他系でしょう。
ヒロイック・ファンタジーが幻想系かどうかは、言葉の定義の問題であり作者の意向ではないでしょう。
自由な設定で、主人公が思う存分に活躍する小説は書いて見たい物でしょう。
しかし実際に取り組むには、どうしてもイメージを作りあげる作業で止まりやすいです。
そのような分野では、作者は何かの影響で全体のイメージを作り、そこから細部の設定を行い主人公の登場に至ります。
「ダーティペア」のビジュアル性が何故必要かは、問題ではなくヒロインとして作者がイメージした結果です。
それが受け入れられて、色々な形で広がります。
たぶん、広い年代層特に若い世代も含めると印象に残る造形でしょう。
一方では、その考えや行動は、極端に言えば哲学的かもしれません。
ただし、アクション性・ヒロイン性から見逃しても良い構成にはなっています。
ヒロインの破壊活動・・・星が全滅する事は普通には、悪を退治して丸く収まるとは言えません。
しばしば、見かけるのが自己犠牲で世界を救うというストーリーです。
でもそれは、あまりにも綺麗事と考えたのかどうか、このシリーズではヒロインは助かるためには、普通に破壊を行います。
人間ですから、自身の安全を優先して不思議がないのですが、一般的にはそうともなっていません。
自己安全と自己犠牲という問題を、自己安全のための破壊活動行為で、流してしまうとそのような論議が嫌いな人も忘れてしまえるでしょう。
ヒロイック・ファンタジーが持つ、作者の主人公設定の悩みはこのシリーズでは、自己安全でシンプルに設定されています。
悩めるヒーロー・ヒロインよりも、シンプルな考えの主人公は誰も否定はできないでしょう。

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