管浩江

1980年代に高校時代から作家デビューし、1990年台に入り長編も刊行するようになりました。
SF作家は、理系と幻想系に分けることがあります。
管浩江は、どちらのジャンルも書きますので中間派と言うべきでしょうか。
1990年代の後半からはミステリー作品も書き始めましたが、SFが主体である事は変わりません。
2000年に出版して、翌年の日本推理作家協会賞を受賞した連作集「博物館惑星・永遠の森」以前は中間小説雑誌ではSFは歓迎されなかった事も影響していると思えます。
受賞後は中間誌でもSF発表が可能になった様です。
作者はそれ以前にもSFに対する星雲賞を複数回受賞しており、一部は英訳されて英米に紹介されています。
博物館惑星シリーズは書き継がれるでしょうが、多彩な作品群の一部です。

博物館惑星・永遠の森

作品

・天上の調べ聞きうる者
・この子はだあれ
・夏衣の雪
・享ける形の手
・抱擁
・永遠の森
・嘘つきな人魚
・きらきら星
・ラブ・ソング


連作短編集「博物館惑星・永遠の森」はシリーズ短編集ですが、すべての作品を収録していませんし、今後も書き継ぐシリーズでしょう。
SFの背景の設定は、科学に拘ったものから全くの想像のみで科学的根拠のない場合まで多彩です。
管浩江作品は、幻想系主体の場合は後者になりますが、かなり前者を意識した設定もあります。
博物館惑星は、地球の衛星の月と地球の平衡点のラグランジュ点に作られた、美術・博物品をあつめる巨大惑星とされています。
同一軌道上をまわる3天体は不安定で、ラグランジュ点は特異点として平衡な解が存在する事は数学的に証明されています。
それが、また太陽の周りを公転するのですがはたして安定か微妙です。
作者は軌道計算が出来ないので、確かめた訳でないとしています(軌道計算が出来る人は少ない)。
理系SFの専門家の計算によると「博物館惑星」の自転方向が周回軌道に対して直角の時のみ平衡で安定解があるとされています。
博物館惑星は人工衛星ではなく、小惑星を引っ張ってきて軌道に乗せたものでオーストラリア程度の大きさとされています。
このような施設を作った訳は、特殊な環境で生存する生物を直に観察できる環境をつくる事や、劣化する美術品を保存する環境を作るためとされています。
一種の思考実験として考えて、このような設備を作って展示・保存物を集める事はかならずしも一意的な方法ではなく、そこに色々な感情や考えが生まれます。
巨大データベースで制御された科学の一面、芸術を集めるという全く別の一面、生物を特殊な環境を作って集めるというまた別の一面が交叉します。
そこに科学的な状況を感じる人も、広大なロマンを感じる人も、逆に不自然さを感じる人も存在する事で話は展開してゆきます。
まだシリーズとして複数の作品集は編まれていませんが、はてしなく想像が拡がる世界が構築されています。

感想等

未来の色々な分野の研究のひとつの想像の産物ですが、ひとつの思想としてありうると思わせる内容でしょう。
文化・美術・生物は、将来・未来的にどのように扱ってゆくのがよいのでしょうか。
自然のなすままに見守るのもひとつ、徹底的に保護・収集するのもひとつの考えです。
その研究や保護等に科学の進歩を徹底的に利用するのもひとつの考え方です。
そうして出来た環境での研究者・人間がどのように対応・行動してゆくかは、SF作家の想像力の世界です。
舞台は科学的でも、物語は人間的な内容になりがちです。
この複合的な内容は、ストーリーを広げて読者を引き込む内容に出来るポテンシャルを充分に持ち、かつ成功しています。
日本推理作家協会賞は、広いエンターテイメントを対象としています。
SFが受賞したのは、星新一のショートショート「妄想銀行」他と小松左京の「日本沈没」以来の3作目になります。
いやあ、すごい顔ぶれですね。
SFといえども人間ドラマの要素が広義の分野では重要に読まれます。
ストーリー自体に、それを含む本作が高く評価されたのもうなずけるところです。
単行本の受賞帯は、本のひとつの勲章です。
しかし本書の初版の帯は、ダニエル・キイスの推薦文という貴重なものです。
それが受賞帯に変わった事はやや複雑です。

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