海野十三

戦前から戦後にかけて活躍した作家で、電気試験所勤務という技術者でその方面の著書もあります。
作家としては、SF・探偵小説・軍事小説・少年向け小説等の多数の著書があります。
SF小説とはっきり判る内容の小説を多数書いており、日本SFの父と言われています。
ジャンル分けしても、それぞれがほかの要素を含む事が多く、独創性・先見性・奇想性などの特徴があります。
現在に至るまでに、複数回の再評価が行われており叢書も幾たびか出されています。
また、一部ではあっても復刊本が読める、数少ない作家です。
ペンネームの読み方に2説(じゅうぞう・じゅうざ)ありますが、最近は「じゅうぞう」がやや多いです。
麻雀の勝負は、「運が十さ」から「うんの・じゅうざ」説も根強いです。

火星兵団

・火星兵団:初出 新聞掲載 1939-1940

    :復刊 1980

感想等

本作者のSFには、人体改造テーマと地球侵略テーマが主流です。
前者は、探偵小説と呼ばれる作品群にも登場する事が多く、境目が難しいです。
「火星兵団」は長編で、典型的な地球侵略テーマです。
地球にモロー彗星が接近して衝突の危機が迫ります。
ところが、地球の大騒ぎを知った火星人(生物)が、地球の破壊前に、人類や動植物を手に入れて火星に持ち帰る。
そして、家畜や資材として利用しようと考えて、兵団を組んで地球に攻めてきます。
彗星の衝突と、火星兵団の侵略という2つの問題を人類は如何に防ぐ事ができるのかと言う内容です。
初出が少年向け新聞連載であり、哲学的な内容ではありません。
しかし、当時はほとんど知られる事のない宇宙や科学技術を若年層に、伝えたいという気持ちが溢れています。
書かれた戦前は、日本の科学技術の後れは明白であり、多くの科学者の必要性がありました。
科学技術に、多くの興味を持ってもらう事が大きな目的だった事は間違いありません。
教科書も多く書いている作者ですが、多くの特に若い世代に読んでもらいたいという動機が、SF小説という形になりました。
優秀な日本人よ立ち上がれという考えは強いですが、相手が宇宙人の侵略という事で、軍事・諜報小説として扱われなかった様です。
軍事・諜報小説は、時代を考慮すればやむを得ない所があり、その部分を除いて内容があれば評価しても良いと思いますが単純に無視の人も多いです。
海野にもその時期の作品がありますが、SF的・奇想的内容の加味でやや否定的設定が薄れています。
結果として、軍事小説も復刊されている事は喜ばしいです。
火星兵団についても作者は、あり得ないはなしと思うかもしれないが、類似した事は将来に起こりうるとしています。
思想的に、科学技術を用いた未来に起こりうる(形は同じでなくても)小説を書いたとう事で、まさしくSF小説です。

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