都筑道夫

エンターティメントという便利な言葉・ジャンルが出来ました。
何となく大衆文学の殆どを含めるニュアンスがあります。
そしてその全てのジャンルに登場するのが、都筑道夫です。
編集者や代筆やフリーライターの仕事を経て、小説の世界に入りましたがそのジャンルは広くかつ実験的です。
SFも当然その一つですが、短編やショートショートを含めて多くの作品があります。
長編は作品数に比べると少ないのですが、「翔び去りしものの伝説」は多くはない長編です。

翔び去りしものの伝説

・「翔び去りしものの伝説」:1974年
   雑誌奇想天外(2期)連載


初期の実験的なミステリ作品群には、SF的要素を持つものもありました。
書き継いでいたショートショートや短編には、幻想・怪奇と並べてSFテーマも含まれます。
その作者が書いた長編SFは、当時はまだ日本では殆ど無く、この後に爆発的に多く書かれた「ヒロイック・ファンタジー」です。
架空の世界を舞台にしての、英雄談・冒険談はこの後のSF界の地図を書き換えました。
本編は現実世界から、異世界で甦った主人公の冒険談で、最後に病院で目覚めた主人公は全てを忘れています。
冒頭と最後が新しいジャンルに飛び込む作者のちょっとしたとまどいを感じさせます。
海外作品にも詳しい作者には、このジャンルにも関心が高かったと思えます。

感想等

海外では、伝説の形で多くの英雄談があります。
伝説ならば、異世界を舞台にした方がより自由に面白く描けると誰しも考えそうですが、日本ではSF自体が少し遅れて始まった関係でこのジャンルも遅れたのかもしれません。
本作以降、現在までを見るとヒロイック・ファンタジーは花盛りです。
SF要素があるもの、幻想的な作品、伝奇的な作品、色々な要素を持つ作品など多岐に渡ります。
作品は長編がメインでかつ、それが多くの作品のシリーズとなっています。
現実の世界を背景にした冒険小説も同時に発達しましたが、それが時代を遡ったり、もしもを含めたりしています。
それならば、背景自体を想像で作り上げてしまうという考えです。
本作もそうですが、甦り・別人への成りすまし・のり移りという事が当たり前のように起きます。
それはあたかも少年向きの変身ものの世界と同じとも言えます。
ヒーローとその活躍はシリーズとして成立し、いつの時代も多くのファンを得るようです。
都筑自身は、本作のみでかつ本作も長く伝説的な作品でした。
都筑の興味は、次から次へ移ったようです。そのジャンルは境界はなかったと思います。

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