香山滋

1946年に本作で戦後第1回の「宝石」新人賞でデビュー。
ミステリの賞ですが、江戸川乱歩は本作を空想科学小説に属するとし期待した。
その後、ホラー・幻想等のジャンルが広がり、SFもその範囲を広げました。
香山作品をどの様に分類するかは意見の分かれる所です。
香山の奇想は現在も読み継がれています。
現在は、映画「ゴジラ」(1954)の原作者としての方が有名かも知れません。

オランペンデクの復讐

「オランペンデク」3部作

・オランペンデクの復讐:1947年
・オランペンデク後日譚:1948年
・オランペンデク射殺事件:1959年


「オランペンデク」は「矮小人間」の意味でスマトラ島で発見された新人類との設定です。
戦後すぐで、まだSFがジャンルとして確立前の為に、奇想とミステリ的要素との妥協を指摘されています。
テーマは「滅び行く原始種族の悲惨」でありその後も香山作品の大きな思想となります。
第2作も同様ですが、滅び行く原始種族への思いと人間社会の倫理観とのギャップがテーマとも言えます。
第3作はかなり後年に書かれています。
未発見の新人類への否定が広まるなかで、その存在を信じる訴えの作品です。

感想等

ミステリは広いジャンルです。色々な種類の作品を含めます、従ってジャンル分けの困難な作品も多く存在します。
香山滋作品は幾つかのジャンルを横断する奇想小説ですが、発表時の乱歩の評から空想科学小説として迎えられました。
多数の作品を残した作者ですが、作品の中にロマンを感じる事は普通ですが、同時に読者へのメッセージを込めた作品も多くあります。
戦前・戦後に書けて、秘境小説と呼ばれる作品群がありました。
人類が地球のほとんどを観測する時代になると次第に減少せざるを得なかった作品群です。
小栗虫太郎・橘外男・香山滋等が代表です。
現代のSFは宇宙に飛びだしていますが、まだ地球に未開の秘境が有ったのです。
未開の地があれば未知の生物が存在すると考える事も自然です。そして新人類へと繋がる事も同様です。
現在でも新生物を探す事は行われていますが、しかしそれがその種族の滅亡という歴史をたどる事も意味します。
人類の未開地への進出で自然破壊・滅びる生物の存在が問題化されてきたのはまだ歴史は浅いです。
しかも、人間にとって食用や色々な用途に使用されて加速されています。
ある人にとって必要なものは保護とは言わず、不要のものは他の民族では必要でも保護という言葉を使用します。
まさしく人間のエゴと驕りがはっきり現れます。
香山は、早くからそれを作品の中にメッセージとして入れて読者に送っています。
SFが科学の発展を謳うのみではなく、宇宙や人間そして時間の流れを広く捕らえて問題点を描く事は常識になってきています。
後年の香山の原作の「ゴジラ」が核兵器から生まれた怪獣という事はかなり知られています。
生涯を通じてのメッセージが既にデビュー作にも現れていると言えます。

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